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最後の夏、メンバー不足で出場かなわず 佐賀大会始球式に登板へ

2022年6月29日18時00分

朝日新聞DIGITAL

 第104回全国高校野球選手権の地方大会が各地で開かれる中、部員不足で「最後の夏」に出場がかなわない球児がいる。佐賀県玄海町の県立唐津青翔高3年の古舘哲平君。1人で野球に打ち込んだ姿勢を高く評価され、7月9日の佐賀大会開幕戦で始球式を務めることになった。

 6月上旬、練習後のグラウンドで、古舘君は大串郁人監督(22)から「大会には出られない。自分たちの力不足で、ごめん」と告げられた。うつむく古舘君に大串監督が「明日も練習するか?」と聞くと、「します」。

 だが翌日、古舘君はグラウンドに姿を見せなかった。大串監督が部室に行くと、古舘君は考え込むように座り、「なんで出られないの……」と涙を流した。この日だけは練習を休んだ。

 野球部には昨年まで上級生がいて、第103回大会で古舘君は中堅手として出場した。だが先輩の引退後は1人に。昨秋の佐賀県大会は別の1校と合同で出場を予定したが、人数不足で辞退。今春は2校と連合チームを組んだ。

 古舘君は、新年度の部活動紹介で「素人でもいいです。野球を見るのが好きなだけでもいいです。とにかく来て下さい」と訴えた。休み時間で教室を移動する時も、すれ違う人に「野球やらない?」と声をかけた。

 今春に連合チームを組んだ2校は部員を増やし、今大会は単独で出場することになった。唐津青翔は野球経験があるサッカー部員やバドミントン部員ら6人を集めたが、連合チームを組む相手がなかった。

 「ただ悔しいという気持ちだけ」という古舘君。それでも「体を動かすのが好きで、野球が好き。試合に出られなくても、いつも通り楽しくやりたい」と、その後も練習を続けている。

 大串監督は「こつこつと努力でき、野球に対する情熱がすごい。他のチームでもレギュラーになれる技術がある」と話す。今夏に連合チームを組めれば内野を守るかもしれないと、内野の守備を教えた。古舘君は帰宅後に壁にボールを当てて1人で練習し、翌日にはこなせるようになっていたという。

 6月下旬の練習では、ノックで軽快なグラブさばきを見せる古舘君に、大串監督は「おー、いいね! また練習したな」と声をかけた。

 今年4月からマネジャーとして野球部に加わった徳田麗(うるは)さん(2年)も、古舘君を応援してきた。もともとバレーボール部員だったが、グラウンドから体育館まで打球音や古舘君の声が聞こえ、「一緒に頑張りたい」と心を動かされたという。スコアをつける練習で他校の試合を見に行った時、その監督に「(古舘君を)一緒に練習させて下さい」と頼み込んだこともある。最後の大会に出られないと知った時、「私も泣きそうだったけど、それ以上に哲平君はつらかったと思う」と振り返る。それだけに、古舘君が始球式に出ることは「輝ける場所ができてよかった」と話す。

 大串監督は佐賀北高の元主将で、2007年夏に同校を全国制覇に導いた百崎敏克監督(当時)の指導を受けた。百崎さんからは「高校野球にとって甲子園は目標であって目的ではない」と教わった。大事なことは、甲子園を目指す過程で人間的に成長することだと大串監督は考えている。古舘君に「苦しい環境でやってきたことを良い経験にしてほしい」と願う。

 7月9日にマウンドに立つ古舘君は「最後まで自分らしく楽しくやりたい」。サッカー部から応援に加わってくれた仲間が構えるミットをめがけ、思い切り直球を投げるつもりだ。(布田一樹)

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