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近くて遠い場所「甲子園ラン」 被災地走り抜け、たどりつくゴール

2022年6月25日12時13分

朝日新聞DIGITAL

 【兵庫】「もう1カ月ないんよ」「点取らなあかんで」

 夏を控え、野球部員らの声が響く長田の神撫台(しんぶだい)グラウンド。芦屋市から通う渡辺優選手(3年)は、練習中、今年1月のことを思い出した。東遊園地(神戸市中央区)から阪神甲子園球場まで走った「甲子園ラン」。「甲子園を経験したいという思いを強くしました。それと同時に、ただ野球をするだけではなく、地域にも目を向けないといけないと思いました」

 1995年の阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた神戸市長田区にある学校。野球部のグラウンドの擁壁にも亀裂が入り、野球ができる状態ではなかった。校舎には近隣から最大で約1700人の避難者が身を寄せた。

 20年後、長田は21世紀枠の近畿地区候補校に選ばれ、2016年の選抜大会に出場することになる。学校が力を入れる防災教育も評価され、新聞などには「復興の象徴」といった文字も躍った。だが永井伸哉監督には違和感もあった。「部員には自分のこととしての実感がないのではないか」

 震災の後に生まれた世代。遠方から通う生徒も多い。「地元で応援してくださる方にも被災地の代表と思っている人がいると思う。選手にも責任を持って出てほしい」

 そこで「震災に関してできることを」と16年1月、初めて甲子園ランを開催。新型コロナの影響で中止した21年を除き毎年続けている。

 6回目となった今年1月8日の朝、東遊園地に部員ら約25人が集まった。「1・17希望の灯(あか)り」の前で永井監督が「OBにも被災した人や家族が犠牲になった人がいる」と話した後、黙禱(もくとう)を捧げ、選手は甲子園に向けてスタートした。永井監督は選手の表情が変わるのを感じた。「黙禱した後は何と言ったらいいか……凜とした、重みのある空気になります」

 約18キロの道のり。途中には震災で高架橋が倒壊した国道43号沿いも通る。約1時間半ほどかけて全員が球場に着いた。

 「ここから入って、室内練習場はあの辺」「球場からスコアボードを見ると鳥肌が立つぞ」。永井監督は選抜大会で戦った16年の経験を伝えた。「被害の大きな地域を走り抜け、苦しい道のりの果てに出てきた甲子園がゴールというところを考えてほしいです」

 兵庫大会はきょう開幕する。中島壮太主将(3年)は「兵庫大会で8回勝たないと甲子園に行けないという長さが、実際に走った球場までの長さと重なりました。8回勝ちきり、甲子園で1勝して校歌を歌いたいです」と意気込んでいる。=終わり(この連載は大下美倫が担当しました)

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