曲が流れたとたんに決勝ホームラン チームを後押し「たまねぎの歌」
【兵庫】タマネギにタイ、レタスに牛乳。数々の名産品のある淡路は古来より「御食国(みけつくに)」と呼ばれ、皇室や朝廷に新鮮な食材を献上してきたといわれている。そんな地で球を追う球児たちは、地元の食材を食べ、地域からの力をもらい育ってきた。
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南あわじ市の淡路三原では、試合でチャンスになると音頭調の曲が流れ、ベンチやスタンドが手拍子を始める。名前は「淡路島玉ねぎのうた」。流れを変える応援曲だ。北条誠斗主将(3年)は言う。「聴くと育った街のことを思い出します。ずっとやってきたから大丈夫、とのびのびプレーができます」
曲が試合の応援に使われ始めたのは昨夏のこと。当時の責任教師、山村春樹(かずき)さんが「淡路では地元の子どもたちを応援する気持ちが強い。お世話になった島にまつわる歌を応援歌に」と考えた。
偶然、見つけたのが、淡路島出身のシンガー・ソングライター、オオツエさんが歌うこの曲だった。
♪玉ねぎ 玉ねぎ 豊かな大地で 育つ その玉ねぎは かめばやわらかくて
聞いた瞬間「おもろい!」。帰りの車でも口ずさむほど頭に残るメロディーに魅力を感じ、即決。オオツエさんに連絡をし、使用を快諾してもらった。
昨夏は新型コロナウイルスの影響で球場にブラスバンドが入れなかった。吹奏楽部に演奏を録音してもらい、スピーカーを使ってスタンドのマネジャーが再生することにした。
迎えた初戦。曲が流れた直後、樫本旺亮選手(当時3年)が本塁打を放ち延長十回の接戦を制した。その後の試合も曲に続いて大量得点したりピンチを乗り切ったり。「流れを変える応援曲」になり、曲が流れるとベンチから「玉ねぎ来たー!」と声が上がり始めた。最初は山村さんが曲に合わせて始めた手拍子も、いつしかベンチやスタンドの保護者に広まっていった。次第に「この曲が流れたら大丈夫、となっていきました」と山村さん。過去最高の16強入りを果たした。
北条主将は、部活でうまくいかないことがあった時もこの曲を聴くという。秋と春は県大会に進んだら音源を流す予定だったが、いずれも地区大会止まりだった。今夏は3年ぶりにブラスバンドによる応援ができ、生演奏をバックにプレーできる。「昨年のベスト16を通過点として、頂点に立つことが目標。プレーを通して淡路を盛り上げたいです」と意気込む。