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シートノックを打つ女子部員 3年間未勝利でも、「やりきった」

2022年6月19日16時35分

朝日新聞DIGITAL

 (19日、第104回全国高校野球選手権沖縄大会1回戦 コザ12―2豊見城南)

 腰まで伸びた長い髪の毛を三つ編みにし、ノックバットを握った。

 甲高い声が球場に響く。

 「いくよー」

 「ナイスキャッチ」

 「もっと前ー」

 豊見城南で、試合前のシートノックを打つのは、大谷寿音(ことね)。3年生の女子部員だ。

 右へ、左へ。ゴロやフライを打ち分け、それぞれの守備位置につく選手たちの足を動かす。あえて、ボテボテの球を打つことも。「試合で飛んできそうな打球を意識して打っているんです」

 7分間のノックを終えると、ホームベースについた土を手で払った。「今までありがとう」との思いを込めて。

 小学5年生のころ、1歳下の弟がやっていた影響で「楽しそう」と競技を始めた。中学では学校の軟式野球部で男子と一緒に練習しながら、女子野球のクラブチームでもプレーした。

 高校では当初、野球を続けるつもりはなかった。

 「でも、両親と一緒に練習を見学に行ったら、やっぱり、やりたくなっちゃいました」。入部届を出した。規定で高校では大会に出場できないことも学校から伝えられたが、それでもよかった。

 純粋に、バットの芯に球が当たった時の快感や速い球を投げられた時の喜びを、味わいたかった。

 「3年間、やりきる」と誓った。

 ふだんは二塁手として男子に交じって練習をしている。大城浩二監督(43)らのすすめで、「チームを鼓舞して欲しい」と、試合のノッカーを任されるようになった。

 女子部員がノッカーを務めるのは珍しいが、ふだんの練習状況などから安全面も考慮され、県高野連に認められた。

 最初は思うように打てなかった。「外野まで打球が飛ばなくて、時間内にも終われない。迷惑をかけてばかりだった」と振り返る。

 全体練習を終えた後の自主練習で、ノックバットを握り、ネットに向かってボールを打つのが日課になっていった。

 迎えた最後の夏。

 ノックを打ち終えると、すぐにユニホームから制服に着替えた。髪形も、「もう邪魔にならないから」と三つ編みをほどき、いつものポニーテールに戻した。監督の隣でスコアブックを広げ、記録員としてベンチに入った。

 試合は春の県大会で16強のコザに2―12で六回コールド負けした。でも、「100%の力を出せた。いままでで一番のノックができました」。

 「いままでで一番」だったのには、理由がある。試合序盤、チームは何度もピンチを迎えたが、そのたびに好守でしのぎ、五回までは1点差で食らいついたからだ。

 ベンチで監督や選手たちに言われた。「寿音のノックのおかげ」「いい準備ができて試合に入れた」「ありがとう」と。ふだんは、やんちゃな同級生や後輩たちの言葉に、うるっときた。

 入学してからの3年間、公式戦で1勝もできなかった。「苦しいことの方が多かった」という。卒業後は野球を続けるかどうか迷っている。

 ただ、今は胸を張ってこう言える。

 「やりきったし、ここまで頑張ったなと思う。たくさんの人からまた喜んでもらえるような人になりたい」

 目を真っ赤にしながら、にこっと笑った。(山口裕起)

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