4年ぶりの夏の甲子園めざす興南、昨秋以来の公式戦でコールド発進
(19日、第104回全国高校野球選手権沖縄大会1回戦 興南11―0沖縄工)
主将のひと振りが、チームに勢いをもたらした。
一回2死。興南の3番禰覇(ねは)盛太郎が外角球を力強くとらえると、逆風を切り裂いて打球は伸びていく。「いい感じで当たったので、入ってくれと願っていました」。打球はそのままバックスクリーン右へ吸い込まれ、禰覇は拳を突き上げた。
主導権を握ると、チームは一気に畳みかける。
二回はヒットエンドランや盗塁など機動力を駆使して2点を加え、三、四回も中堅中心に打ち返し、打線がつながった。
計12安打で11得点。五回コールド勝ちだ。
チームは、新型コロナウイルスの影響で今春の県大会は辞退した。3月下旬から2週間、学校は休校になり、その間は各自が自宅で練習していたという。禰覇は宜野湾市の自宅の駐車場で毎日500スイング、振り込んでいた。
野球に飢えていた選手たちは、梅雨の大雨の中でも長靴を履き、カッパを着てノックを受けた。「雨が降れば他校のほとんどは練習が休み。チャンスだと思っていました」
この日は昨秋の九州大会準々決勝以来の公式戦だった。我喜屋優監督(71)も「不安で緊張していた」というが、実戦不足の心配をよそに選手たちは躍動した。
2010年に甲子園で春夏連覇した際のエースで、昨年からチームを指導する島袋洋奨コーチ(元ソフトバンク)が、今大会は副部長としてベンチ入りする。「少しでも参考になれば」と、当時のチームの練習法や甲子園の雰囲気などを選手たちに伝えている。
この日、3打数3安打4打点の禰覇は「島袋先輩たちの代のように、自分たちも負けないチームになりたい」
4年ぶりの夏の甲子園出場に向け、優勝候補の本命が好発進した。(山口裕起)