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1死三塁でエンドランはなぜ 斎藤佑樹さん納得の新設校のこだわり

2022年6月20日11時00分

朝日新聞DIGITAL

 ■斎藤佑樹「未来へのメッセージ」 埼玉・開智未来へ

 僕は野球で勝負したいとの思いから、早稲田実業(東京)に進学しました。

 1905(明治38)年創部の伝統校で学ぶことはたくさんあり、先輩方が築いた戦術や部のルールは尊いものとして受け継がれていました。

 ただ、100年の伝統を持つだけに「こうあるべきだ」という固定観念が強く、新しいものを生み出すことは苦手だったかもしれません。

 対照的な学校を見つけました。創部からわずか6年目の埼玉の開智未来です。

 プロ野球を引退し、新しいことに取り組もうとしている僕に多くのヒントをくれました。

 開智未来は2011年、埼玉県北部の加須市にできた私立の進学校です。14年に軟式野球部ができて、17年に硬式野球部へと生まれ変わりました。

 どんな道のりを歩いてきたのでしょうか。

 選手たちが大事にするメニューがあります。1死三塁で徹底してヒットエンドランを練習するのです。

 スクイズも考えられる状況で、なぜヒットエンドランなのか。奥野莉玖翔(りくと)主将(3年)は「正解ではないかもしれないけど、自分たちで『これで行こう』と決めたもの」と言います。

 硬式へ移行したときに主将だった田原鷹優(けいゆう)さん(22)によれば、当初から「軟式のスタイルで勝つ」ことを目標の一つに掲げ、打球が跳ねやすい軟式球でゴロを狙う「たたき」という技術を生かそうとしてきたそうです。

 「一般的にはスクイズのほうが得点の確率は高い。でも、軟式から学んだ特有の攻め方をずっと練習してきたうちのチームに限っては、エンドランの方が確率が高いと思います」

 いまは立命館大野球部でデータ分析担当を務める田原さんはそう言います。

 戦術の良しあしではなく、チームの個性としてヒットエンドランを大事にしていたのです。

 こんな場面がありました。3年生がなかなかヒットエンドランを決められずにいると、1年生が「僕がやります」と立候補しました。

 誰かにやらされている練習だと、こういう発想は出てこないと思います。練習に打ち込む選手たちは実に楽しそうなのです。

 部員自身が考えて、選択する。

 軟式の創部時から指導する伊東悠太監督(35)が大事にしてきたことです。練習中、選手たちだけでミーティングをする光景を何度も見ました。

 「もちろん甲子園を目指しているけど、いつかはユニホームを脱ぐ。その後の人生でも活躍できる人になってほしい」と伊東監督は言います。

 取材後、マネジャーの原口桃さん(2年)が僕の好物のアイスクリームを差し入れてくれました。

 そして、原口さんのかけ声で部員全員が「ハッピーバースデー」を歌ってくれたのです。

 約2週間後の6月6日に34歳の誕生日を迎える僕のために準備してくれていたそうです。うれしいサプライズでした。

 引退した昨年の末、僕は「野球未来づくり」をテーマに掲げて会社を立ち上げました。

 自分が経験してきたことを未来のために生かし、ここまで育ててくれた野球界に恩返しをしたいとの思いからです。

 お手本があるわけではなく、一からの挑戦です。

 そんな僕にとって、セオリーや固定観念にとらわれない開智未来の部員たちの行動は、とても新鮮で魅力的でした。

 一つ一つのことに納得して自発的に取り組んでいるからこそ、本当の熱量が生まれるのだと改めて教えてもらいました。

 チームはこの夏、公式戦初勝利に挑みます。埼玉大会は2回戦からの登場で、滑川総合と庄和の勝者とあたります。

 結果を求めることも大事ですが、開智未来らしく、野球を全力で楽しんでほしいと思います。(バーチャル高校野球フィールドディレクター・斎藤佑樹)

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