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いまなら打てるあのスライダー 先輩の一言が自分を変えた 明聖

2022年6月11日09時00分

朝日新聞DIGITAL

 フルスイングしたバットは空を切った。先輩に託された打席だったのに。

 昨夏の千葉大会4回戦。0―1の二回表1死三塁、明聖(千葉市)の8番打者、岩井義誠(現3年)の狙い球は、スライダーだった。相手の東京学館浦安(浦安市)投手の決め球と聞いていた。

 相手は前進守備。打席に入った時はつなぐ意識だったが、フルスイングに切り替えた。

 追い込まれた5球目。来た。外角低め、約120キロのスライダー。思い切り振った。「ストライク!」。三振を告げる球審の声が聞こえた。「キレもスピードもあった。当時の自分では絶対に打てない球だった」

 2打席目もスライダーに空振り三振。五回に交代すると、その後はベンチでずっと下を向いていた。試合は0―1で敗れた。

     ◇

 本来であれば、この日は3年生の先輩が出場するはずだった。4番を打つこともあった強打者の先輩。ただ、変化球が得意な相手投手との相性を考え、レギュラーではない岩井が起用されていた。自分でも予想外だったが、先輩は「頼むぞ」と背中をたたき、送り出してくれた。

 試合が終わると、その先輩は泣いていた。そして、言われた。「次の夏で取り返してくれ」

 新チームが発足し、岩井は主将に就いた。副主将の渡辺暖(はる、現3年)は「岩井しかいない」。普段は明るく、練習中は厳しく。オンオフの切り替えがうまく、頼りにされていたからだ。

 岩井がまず取り組んだのは、昨夏に空振りしたスライダー対策だった。フォーム調整で、1日500球以上のティーバッティングを行う日も。バッティングマシンにはスライダーやカーブを投げ込ませ、さらにマシン最速の130キロの直球を通常より近い距離に置き練習した。

 「あの打席が無ければ、ただ単にやる野球のままだった」

     ◇

 ただ、新チームは練習試合で負けが続いた。

 今春就任した竹内亨監督は、下位打線まで全員がフルスイングする現状に課題を感じていた。そこでチーム全員に伝えた。「状況に応じたバッティングをしよう。これじゃ勝てない」

 直球と変化球で振るタイミングを変える。変化球は引きつけて打つ。岩井は、そんな打ち方を率先して練習し、チームも倣った。

 チームの調子は上がってきた。直近の練習試合の勝率は5割を超えた。夏の目標は県8強だ。

 野球帽のつばには、先輩からもらった言葉「一打席も無駄にせずフルスイング」と自ら書いた。試合前、必ずこれを読む。今はすべてフルスイングではないが、昨夏の悔しさを思い出すためだ。

 今なら、あのスライダーは打てる。=敬称略(鳥尾祐太)

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