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聞こえづらさも練習や工夫でカバー 白球を追う情熱、ここにも

2022年5月15日09時06分

朝日新聞DIGITAL

 試合中の指示や声かけが重要な野球で、千葉県立千葉聾(ろう)学校(千葉市緑区)の野球部が熱い戦いを続けている。耳の聞こえづらさを前提にした練習や工夫でカバー。白球を追う情熱は、ここにもある。

 4月30日、袖ケ浦市であった第70回春季県高校軟式野球大会の1回戦。千葉聾の選手たちは、全員補聴器や人工内耳をつけ、グラウンドを駆け回っていた。

 ベンチから飛ぶ声は、耳の聞こえる選手がそろう相手の市川高校と比べると静かだ。ただ、攻撃前の円陣では、千葉聾の選手同士の手がめまぐるしく動き、うなずき合う。手話や指文字で、相手投手の攻略法などを伝え合っていた。

 特に難しいのは、連係が重要な守備だ。千葉聾の選手たちは音は少し聞こえても、とっさの声かけに頼れない。

 六回表2死三塁のピンチ。千葉聾先発の丹野弘釈(ひろとき)投手(高等部3年)が相手1番打者に投じた5球目が打ち返され、ふらふらとレフト方向に飛んだ。

 誰が捕球するか――。「オーライ」と声を上げる代わりに、遊撃手の長田陽斗(はると)選手(同1年)が手を広げて捕球の意思を示した。

 だが、左翼手の時田晃希選手(同2年)は迷わず、走った。地面が土の部分は遊撃手、芝は自分。守備範囲をそう決めていた。

 「遊撃手が捕るにはぎりぎり。捕れるかわからないけど、積極的にいかなきゃ」。外野の芝に落ちそうになった打球を、時田選手が体勢を低くして好捕した。

 相手の打球が外野手の頭を越えたとき、「走者がいれば本塁へ送球」「走者がいなければ三塁へ送球」など、事前に決めたルールはほかにもある。「バックホーム」などと声を掛け合う代わりの約束事だ。

 チームは現在、中学部6人と高等部11人の計17人。全員が中学から野球を始めた。

 藤田正樹監督(39)=千葉聾教諭=はかつて、東海大市原望洋高校で主将を務め、東海大体育学部へ進学。母校で球児を指導したいと考えていた藤田監督にとって、2009年に千葉聾野球部顧問になった時は戸惑いも大きかったという。

 だが、指導するうちに球児らの一生懸命さにひかれた。「強豪校の指導者と違い、0から始めた選手を6くらいにする。ここでしかできない仕事。選手には野球を通して外の世界に触れて、自信をつけてほしい」

 市川高校との試合は0―7の7回コールド負けだった。11盗塁を許し、相手走者の走り出しを捕手や三塁手が投手にアピールすることなどに課題が残った。

 それでも、藤田監督は「聞こえないから、とは絶対に言わせない。野球は聞こえにくくてもできるし、ルールは同じだ」という考えだ。試合後、選手たちには「同じ高校生で言い訳はしたくない。練習したらうまくなるって、中1からそうやってきた。もっと練習しよう」と発破を掛けた。

 打線は無安打に抑えられたが、藤田監督には期待もある。大内黎主将(同3年)は、中学から野球を始め、「聞こえるチームでも四番を打てる強打者」(藤田監督)だ。

 親友の丹野投手とは「寄宿舎でも野球の話しかしない」と大内主将。母親のはるみさん(51)は「以前は主将ができる性格ではなかったが、しっかりした。みんなで切磋琢磨(せっさたくま)して楽しんでいて、野球に出会えて幸せそう」と見守る。

 7月には県高野連主催の第67回全国高校軟式野球選手権千葉大会が、8月には中学部の選手も参加できる第71回関東聾学校野球大会がある。千葉大会では単独チームで15年ぶりの1勝、関東聾では6年ぶりの優勝を目指す。(上保晃平)

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