星稜エース「一球の怖さを知った」 甘く入った直球、許した決勝HR
【石川】第9日の28日、星稜は国学院久我山(東京)と対戦した。2―4で敗れて悲願の選抜4強入りの壁は突破できなかった。だが、連日の試合にも選手たちは最後まで粘りを見せ、夏の飛躍につながる手応えをつかんだ。
「ここを乗り切ってチームに勢いを付ける」。星稜のエース、マーガード真偉輝キアン投手(3年)は決意してマウンドに上がった。五回裏1死、1点差に詰め寄られた場面だ。
最初の打者を三振に取って2死。だが、気負いすぎたか、続く打者のゴロを自ら一塁に投げた送球がそれて、同点に追いつかれた。
国学院久我山には中2日の休養があったが、星稜は雨天順延により前日に続く連戦。自身は連投だった。
調子は悪くなかったというが、直球は走らなかった。そんな一球が、強打の4番下川辺隼人選手(3年)に甘く入った。打たれた瞬間に分かったという2点本塁打を左翼へと運ばれ、決勝点を許した。
沖縄県出身。奥川恭伸投手(現ヤクルト)らを擁して2019年夏の甲子園で準優勝した快進撃に憧れて星稜に進んだ。
昨秋から背番号1を背負い、今大会も通算16回3分の2を投げて5失点。17三振を奪った。この日も、連投にも関わらず、試合前に林和成監督(46)から「中盤から投げてもらう」と告げられていた。何よりの信頼の証しだった。
エースも応えた。六回以降を無失点と粘ると、2点差を追う九回表、自らの打席で反撃の好機が訪れた。
バッテリーを組む佐々木優太主将(3年)が四球を選んで無死一塁。どんな形でもつなぎたい、との気迫にあふれたバントの構えで投手を揺さぶりボールを2球選んだ。たまらず相手投手が交代すると、右前打を放った。
だが、後続は倒れて試合は終わった。
「もっともっと試合をしたかったのに申し訳ない」。ベンチ前で相手の校歌を聞きながら、ひときわ大きく肩をふるわせて泣いた。
そして、やはり目を赤くした佐々木主将を見つけ、クールダウンのキャッチボールをした。互いに涙をぬぐいながら。
試合後には「一球の怖さを知った。夏は成長した姿を見せたい」と語り、甲子園を後にした。(マハール有仁州)