一瞬の隙つく走塁、イチローさんの教え結実 国学院久我山の快進撃
(28日、第94回選抜高等学校野球大会 準々決勝、国学院久我山4-2星稜)
第94回選抜高校野球大会は、選抜4度目の出場で初勝利を挙げた国学院久我山(東京)が、28日の準々決勝でも星稜(石川)を4―2で破り、準決勝に進んだ。快進撃を支えるのは、同校を訪れた元大リーガー・イチローさんの教えだ。
イチローさんが臨時コーチとして指導したのは昨年11月。今春卒業した部員が2年の時に「野球がうまくなりたい。強くなりたい。そのために来てほしい」と手紙を書き、実現した。
キャッチボール、打撃、走塁。選手たちはスーパースターのプレーを食い入るように見つめ、積極的に質問した。尾崎直輝監督は「心技体、すべての面で教えてもらった。選手たちは以前より細かく物事を考えるようになった」と言う。
指導は2日間だけだったが、その後も練習の際に尾崎監督はバックネット裏に、イチローさんが使っていた黒いバットを置いた。「これがあれば『常に私に見られていると思うでしょ』との意味が込められると思い、いただいた」
実際、イチローさんは「教え子」の戦いぶりを注視しているようだ。初戦も2回戦も、試合後すぐに励ましのメッセージが尾崎監督に届いた。
今大会、圧倒的な力こそないが、バントなどの戦術を駆使して勝ち上がってきた。「うちのスタイルは考える野球。イチローさんにも素晴らしいと言ってもらった」。尾崎監督の言葉には自信がのぞく。
この日の星稜戦は、五回2死一塁で、相手の守備が乱れた隙に一塁走者が一気に同点のホームを踏んだ。「一秒でも速く先の塁に行った結果」。上田太陽主将(3年)によると、これも走塁の技術や心構えをイチローさんに教わった効果だった。
一昨年にイチローさんの指導を受けた智弁和歌山は、翌年夏の選手権大会を制した。結果でイチローさんに恩返しを――。それが合言葉になっている。(野田枝里子)