「想像以上」だった救援投手、裏には捕手の対応力 木更津総合の中西
第94回選抜高校野球大会第7日の25日、2回戦があり、木更津総合は延長十三回タイブレークの末、金光大阪(大阪)に3―4で敗れた。春では、前回出場した2016年時の8強に届かなかった。
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いずれも延長十三回に及んだ今大会の2試合で、木更津総合の中西祐樹選手(3年)は、主将として、捕手として、攻守でチームを引っ張った。
エースの越井颯一郎投手(同)は、球を受け取ると数秒で投球動作に入る。このテンポの速い投球を支えているのが中西主将だ。
「どういうときに、何を投げたいのか」。試合前に念入りに話し合っておき、試合では配球を瞬時に決める。「走者がいないときはすぐに返球する。でも、大事なときは自分が持つ時間を増やす」。要所では意図的にためをつくった。
八回。継投で金綱伸悟投手(同)に変わると、リードも変えた。直球でどんどん押してくる越井投手に対しては抑え役だったが、むしろ「向かってこい」と攻めの姿勢を求めた。
その金綱投手は制球が定まらず、先頭打者への死球で出塁を許した。だが直後に、矢のような送球で二盗を防ぎ、金綱投手を助けた。「楽しんでいこう」。しきりに声をかけた。
九回途中、マウンドには金本琉瑚投手(同)が立った。今冬に横手投げにフォームを変え、大舞台での経験も浅い。「球が動くので、コースを狙うよりも真ん中に投げさせた」。金本投手は十三回途中まで、打者15人を相手に被安打0。五島卓道監督が「想像以上の出来」と評価する好救援を引き出した。
打席では、八回2死二、三塁で外角直球を強振。速い打球で相手の二塁手が捕球にもたつく間に、一塁へ頭から突っ込み、三塁走者の生還につなげた。「投手が頑張っていたので、助けたかった。何とか気持ちで1点をとれた」
8強入りは逃したが、「2試合とも延長十三回まで、苦しい状態で粘れた」と手応えを語った。(上保晃平)
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相手エースのスライダーに、木更津総合の打線全体が苦しんでいた。延長十二回まで散発4安打、10三振。走者を出しても、要所を締められる。
そして、延長十三回タイブレーク。1死二、三塁で3番打者の菊地弘樹選手(3年)が打席に入った。ここまで犠打と四球はあったが、スライダーにうまく対応できず、3打数無安打に抑えられていた。
狙いは、そのスライダー。「体が開いていた。センター返しを意識して、体を残して打った」
初球。真ん中に甘く入った129キロの球を、狙い通りセンターにはじき返した。
今大会、タイブレークで打席に立ったのは2回目だ。1回戦の山梨学院(山梨)戦での延長十三回。犠打を警戒した相手が「内野5人シフト」を敷く中、内角を攻めてくると予想。その通りに来た球を、少しつまりながらも左飛にした。これで三塁に走者を進め、最後は四球の押し出し。サヨナラ勝ちとなった。
「大舞台で、いい投手がいっぱいいた。自分もそのレベルについていけるように練習したい」。すでに夏を見据えている。(上保晃平)
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「最後の学校行事に、いい試合を見せてもらった」。今月、定年を迎える木更津総合の青柳裕之教諭(65)は生徒の引率役として球場を訪れた。
甲子園での引率は、2003年夏から今回で春夏通じて10回目。以前は女子校におり、「異動したばかりの当時は、野球部の応援が新鮮だった」と振り返る。
延長十三回タイブレークを戦い抜いた選手に大きな拍手を送り、「甲子園で応援した試合は、いずれも感動させてもらったが、この日も最後まで緊張し、思い出に残る試合となった」と感慨深げだった。(前田伸也)