やんちゃな生徒は「困った子やない」 和歌山東、甲子園で1勝の輝き
2022年3月24日19時10分 朝日新聞デジタル
(24日、第94回選抜高等学校野球大会2回戦、浦和学院7-0和歌山東)
当時は甲子園なんて誰が想像しただろう。創部12年の公立校、和歌山東は24日の浦和学院(埼玉)戦で敗れたが、甲子園で1勝を挙げ、学校史に新たな1ページを刻んだ。
「選手がここでプレーしてるのが、いまだに信じられん」
野球部の特別後援会長を務める西山義美さん(65)はアルプス席で目を細めた。西山さんらが硬式野球部の創設を提案したのは、PTA会長だった2005年。いわゆる「やんちゃ」な生徒が多く、体育祭を見に行くと、体育館の陰でさぼっている生徒たちが目についた。
硬式野球部があれば、地方大会にみんなで応援に行って、生徒たちが一つになれるのでは――。そんな思いがあった。
周囲には冷ややかな見方もあったが、5年かけて実現した。当時、校長だった萩原勝則さん(67)の後押しもあった。「(生徒たちは)『困った子』やない。『困っている子』や」と、萩原さんは言う。
雑草が生い茂り、ベンチも防球ネットもないグラウンドからのスタートだった。
「ここからや!」。四球でチーム初の走者が出て、アルプス席で声を張り上げたのは、創部2期生の辻飛真(ひゅうま)さん(26)だ。
入部した当初は、練習に行くといつも米原寿秀監督(47)が先に来て、草むしりをしていた。
肩を並べて草むしりをし、夜は車のライトで照らして打撃練習をした。前任地で甲子園も経験している米原監督の練習は厳しかった。辞める部員もいたが、一から野球部を作り上げていく喜びがあった。3年夏の和歌山大会では4強に食い込んだ。「後輩たちが甲子園出場という歴史を作ってくれた。今後も新たな歴史を刻んでいってほしい」
この日、新型コロナの影響もあって応援に来た生徒は限られたが、チームカラーの青の上着を着て、メガホンを振った。その一人、武林柚(しゅう)さんは「地域の人たちとも一緒になって盛り上がれるのは楽しい」。
試合後、選手たちは悔しさをにじませつつも、まっすぐ胸を張ってアルプス席にあいさつをした。選手や生徒たちが、確かに一つになっていた。(國方萌乃、下地達也)