「名投手コナン」が2試合23K 浦学エースに込められた南国の誇り
(24日、第94回選抜高等学校野球大会2回戦、浦和学院7-0和歌山東)
南国出身の左腕は、冷たい風が吹く甲子園のマウンドでひょうひょうとアウトを重ねていった。
浦和学院の宮城誇南(こなん)は三回までのアウト九つのうち、六つを三振で奪った。
ゆったりとした力感のないフォームからリリースの瞬間にだけ力がこもる。切れのある速球で打者の胸元を突き、低めに落ちるスライダーやチェンジアップでバットに空を切らせた。
「フォームとのギャップでバッターを差し込みたい。今日は緩急をうまく使えた」
七回まで投げて被安打2。奪三振は10。
13奪三振で大分舞鶴を完封した1回戦に続く好投で、チームを第87回大会(2015年)以来の8強に導いた。
沖縄県読谷村からやってきた。
誇南と名付けられたのは、母千晶さん(43)が漫画「名探偵コナン」が好きだったから。
「南の島で生まれたことに誇りを持って生きてほしい」という願いも込められている。
中学卒業後、地元から1500キロ以上離れたさいたま市の強豪校に進学した。
都会の生活は「キラキラしている」イメージだった。だが、厳しい練習とコロナ禍による制限でなかなか華やぎは実感できていないという。
一番の驚きは寒さだった。
雪を見たのは生まれて初めて。手袋とマフラーを買ったのも生まれて初めてだった。
今でも試合前のウォーミングアップでは人一倍、入念に体を温める。
昨夏は2年生ながら背番号1をつけた。
全国選手権大会初戦の日大山形戦で初めて甲子園のマウンドに立った。4番手で1回3分の2を無失点に抑えたが、チームは3-4で逆転負けを喫した。
エースナンバーを背負いながら先発できなかった悔しさをバネに、冬場に走り込んで下半身を鍛え、雪辱の舞台に帰ってきた。
同じ沖縄県出身の左腕で昨季、13勝を挙げて新人王に選ばれたプロ野球オリックスの宮城大弥(ひろや)(興南)に憧れ、将来はプロ野球選手になりたい。
2試合連続の好投。試合後、インタビュアーに「『名投手コナン』と言われていますが」と振られると、「ちょっと、恥ずかしいです」とはにかんだ。(金子智彦)