「逆転の花巻東」、あと1歩…初戦敗退、主将「チームを作り直す」
相手にリードを許しても動じない「逆転の花巻東」なるか――。大会第5日の23日の第1試合。花巻東は1回戦で市和歌山に4―5で惜しくも敗れた。九回表の猛攻で1点差にまで追い上げたが、あと1本がつながらなかった。しかし、4強に進んだ昨秋の明治神宮大会準決勝を思い出させる猛追を見せてくれた。初戦で甲子園を去るが、夏につながる一戦になったに違いない。
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九回表2死一、二塁。チームは猛攻を見せ、2点差に追い上げていた。打席に立った4番田代旭(あさひ)主将(3年)はひざ下に来た初球にバットを振り下ろし、1点差に迫る適時打を放った。
無我夢中だった。打席に立つ前、佐々木洋監督に「高めを打て。低めは捨てろ」と指示されていた。でも、「つなぐしかない」と思っていた。打球は地面をはうように二遊間を抜け、二塁走者が本塁を踏んだ。
レベルの高い学校で野球をしたいと花巻東を進学先に選んだ。遠野市の実家を離れて寮生活。家族、特に父と双子の姉に迷惑をかけてきたという思いがある。
小学3年生のときに母を亡くし、父が男手一つで姉と自分、弟と妹を育ててきた。その中、父は野球にうちこませてくれた。捕手だった父に憧れて小学生から捕手に。父は捕手の足の動かし方を教えてくれ、仕事が忙しくても練習試合に足を運んでくれた。姉は家族を支えられるようにと地元の高校に進み、活動量の少ない部活に入ってくれた。
家族の支えが自分を奮い立たせてきた。冬は1日1千本以上バットを振り、夕食はどんぶり2杯の白米を食べた。体重は入学時からひと冬で13キロ増え、打球も伸びた。1年生の終盤にはチームの4番を任された。
4番で挑んだ昨夏の岩手大会は決勝で敗れた。昨秋から主将としてチームを引っ張り、この選抜大会で初めて甲子園の舞台に立てた。家族をスタンドに連れてくることができた。
無念の初戦負けだった。自身も暴投を受け止められず、失点につながった。試合後に「憧れてきた甲子園のプレッシャーに負けてしまった」と振り返った。
でも、課題を見つけられた試合でもあった。「もう一度チームを作り直し、必ず次につなげる」。夏に再びこの土を踏むつもりだ。(西晃奈)