斎藤佑樹さんが大島へ 地域との絆は「これからの高校野球のヒント」
プロ野球北海道日本ハムファイターズを昨季限りで引退した斎藤佑樹さん(33)が17日、朝日新聞社と朝日放送が運営する高校野球情報サイト「バーチャル高校野球」のフィールドディレクター(FD)に就任した。全国の高校を取材に訪れ、球児の取り組みや指導者の考え、現場が抱える課題などをリポートする。
■初回は鹿児島・大島へ
現役引退後、自分が経験してきたことを野球の未来のために生かしていきたいと「野球未来づくり」をテーマに掲げました。
ここまで育ててくれた野球界に恩返しをしたいとの思いからです。
でも、僕には野球選手としての経験しかありません。学んでいかなければと思いました。
話を聞きたい人へ会いに行き、勉強したい場所へ足を運ぶ――。
試合の解説や子どもたちの指導よりも、いまの僕に必要なのは、スポーツの現場を取材し、学び、ヒントを探っていくことだと思ったのです。
その最初の現場に、離島の学校を選びました。鹿児島県の奄美大島にある大島です。
昨秋の九州大会で準優勝し、今春の第94回選抜大会へ出場します。21世紀枠で初出場した2014年以来、2回目の甲子園です。
僕自身が所属していた早稲田実業は、東京のいわゆる伝統校、強豪校でした。野球に打ち込む環境は整っていました。
逆に、離島の学校は遠征や部員の確保など様々な難しさを抱えていると聞いていました。その実情を、純粋に知りたかったのです。
早稲田大時代の卒業論文のテーマは「スポーツの地方興行と観客動員の地域の中での経済効果について」でした。
もともとスポーツと地域のつながりに強い関心があり、今回は学校以外の場所も訪ねました。
奄美市役所では市長の安田壮平さん(42)に8年前、大島が甲子園に初出場したときの島の様子を聞きました。
「試合の間、街が静かで、ほとんど車が走っていなかった。ほとんどの人がテレビ中継に釘付けになっていた」
島の一体感の強さに、衝撃を受けました。
部員が通う島で唯一のバッティングセンターにも行きました。経営に携わる丸目真由美さん(41)の言葉も印象的でした。
「小学生の時から部員のほとんどの子の成長を見てきました。甲子園という舞台が初めてだから、ふわふわしないか心配。母心みたいな気持ちです」
高校時代、環境には恵まれていましたが、ここまで強い地域コミュニティーとの絆を、早稲田実で意識させられることはありませんでした。
選抜は94回、全国選手権大会は今夏で104回を迎えます。
これからの100年の高校野球の歴史というものは、僕たちが作っていかないといけないと思っています。
選手たちを地元の人たちが支える。離島に限らず、高校野球やスポーツがさらに発展していくための大事なヒントだと感じました。
高校野球を盛り上げるために、自分が誰に会い、何を発信できるのか。これから様々な現場に赴くなかで、自分なりのスタンスを探していきたいと思います。(フィールドディレクター・斎藤佑樹)