選手から選ぶマネジャー 「チームの核」として活躍
第94回選抜高校野球大会に出場する長崎日大(長崎県諫早市)にマネジャーは緒方伊吹君しかいない。新チーム発足時に2年生で話し合い、ふさわしい1人を選ぶ慣例があるからだ。だが、長崎日大ではマネジャーこそが「チームの核」。「彼がいないとチームは動かない」と平山清一郎監督は話す。
試合の記録員としてベンチ入りするだけでない。日々の練習では真っ先にグラウンドに駆けつけ、整備の指揮をとる。個々の選手の練習メニューを管理し、トス打撃の球を放り、ノックを打つ。チームが抱える課題をめぐり、指導者と選手のパイプ役もこなす。「けっこう大変ですね」と緒方君は笑う。
だが、マネジャーになることは選手をやめることに他ならない。仲間から自分を推す声があがったとき、緒方君も悩んだ。腰のけがで練習を離れていたが、冬には復帰する見込みだった。何より、あこがれの甲子園でプレーする夢をあきらめるのがつらかった。
1週間考え抜いた末に引き受けたのは「裏方としてチームを支える誰かがいないと、強いチームはつくれない」との思いからだ。
緒方を甲子園に連れて行く――。それがチームの合言葉になった。
引き受けて良かった、と緒方君はいま感じている。
「自分がつくってきたチームが甲子園出場を決めてくれ、うれしい気持ちでいっぱいです」。記録員として入るベンチから誰よりも大きな声で仲間を鼓舞するつもりだ。(三沢敦)