594球投じた近江の山田、高い壁実感 監督「先発は間違いだった」
(31日、第94回選抜高等学校野球大会 決勝、近江1-18大阪桐蔭)
限界だった。
近江の山田陽翔は三回、先頭に死球を与えた直後、次打者に123キロを左翼席に運ばれた。これで4失点。もう手に力が入らず、「これ以上迷惑をかけられない」。自ら申し出て、今大会初めてマウンドを降りた。
1回戦から準決勝までの4試合を一人で投げ抜いたエースは、決勝の舞台も先発を志願。前日は170球を投げ、左足に死球も受けた。それでも「自分が引っ張る」という思いが突き動かした。打撲と診断された左足をテーピングで固め、マウンドに向かった。
3イニングを投げきれなかった。ベンチに戻った後は、主将として仲間に、集中が切れぬよう最後まで声をかけ続けた。
補欠校から頂点にあと一歩まで迫ったが、山田は「壁は高い。短期間で試合があるなか、投手一人では厳しいと痛感した。自分たちには足りないものだらけ」。自分一人では優勝には届かない。今大会投じた594球でエースは大きな学びを得た。(佐藤祐生)
■監督と後続投手の言葉
●多賀章仁監督(近) 「ここまで来たのでなんとかという気持ちだったが、彼(山田)のこの先を考えても、今日先発させたのは間違いだった。夏へ、山田の次の投手を育てることが鮮明に課題として出た」
●星野世那(近) ベンチ入りした昨夏の選手権から通算10試合目で甲子園初登板も、満塁を含む3本塁打を浴び14失点。「しっかり自分が投げていれば。悔しい」