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脱「精神野球」 センバツ出場広島商、ビジネスの手法がうんだ逆転劇

2022年2月16日09時30分

朝日新聞DIGITAL

 3月18日開幕の第94回選抜高校野球大会に広島県から出場する広島商。1899年に創部し、春夏合わせて甲子園で優勝7回、準優勝2回を誇る伝統校は、どのようにチームをアップデートしてきたのか。

 試合後に乗り込んだバスの中で、広島商主将の植松幹太(2年)はしばらく何もできなかった。

 山口県で開かれた昨秋の中国地区大会決勝。序盤の好機であと1本が出ず、機動力を生かそうと試みたバントも失敗。同じ広島勢の広陵に0―7で敗れた。

 気持ちが少し落ち着くと、植松は一冊のファイルを取り出した。この悔しさを、メモでもいいから日誌に残しておきたい。「相手のやりたい野球をやらせてしまった。一からやり直して、今までよりもっと良い練習をする」。この反省が、次の「Plan」につながる。

 計画を立てて実行し、その結果を振り返って次の手を打つ。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとって「PDCAサイクル」と呼ばれる。ビジネスなどで重視される手法だ。

 広島商は100人超の部員がそれぞれ日誌をつけている。月間目標を立て、それを実現するための「ルーティン行動」を決め、練習や試合での反省点を踏まえて次につなげる。

 植松の昨年10月の月間目標は「中国大会で優勝する」「広商の野球を実現し、勝つ」。そのために、三度の食事以外に「1日で補食を3回とる」や「家での素振り100回」などをこなしてきた。

 だが、中国大会決勝で大敗し、Planの練り直しを迫られた。

     ◇

 「野球で勝つためにどうするかは、イコール、ビジネスで利益を出すためにどうするか」。商業科の教諭で、授業では商品開発などを教える監督の荒谷忠勝の発想はユニークだ。

 広商野球部は精神野球に徹すべし――。かつての部員心得はこんな言葉から始まる。広商野球といえば「精神野球」が代名詞とされ、機動力を生かした粘り強い野球は脈々と受け継がれている。

 成長させてもらった母校に、試合に勝つことで恩返ししたい。そんな思いを抱きつつ、荒谷はこうも考える。「鍛えることで、折れてしまうというのは許されない。広商野球を今の子らにどう伝えるか、時代に合わせたやり方を工夫しないといけない」

 2018年、41歳で監督に就任したときに取り入れたのが「広商Dream日誌」だった。それまで11年間監督を務めた呉商で手応えを感じた指導法だ。日誌を活用して練習を工夫し、強豪校と互角に戦える力をつけた――。こう評価された呉商は2012年と15年、県高野連から春の選抜大会の21世紀枠に推薦された。

 毎日書くことで得られるのは、勝つために何をやるべきかを考える力。「やらされている野球ではなく、自分たちでやっているという自覚が芽生えている」

     ◇

 控え投手の伊藤祐輔(2年)は、昨秋の県大会でベンチ入りできず落ち込んでいたとき、荒谷から声をかけられた。「日誌を丁寧に書いたら自分のためになるぞ」

 言われるまま書き込もうとして、伊藤は気づいた。考えながら練習をしていなければ目標や課題は浮かんでこない。意識が変わると、野球への取り組み方も変わった。「遠投は88メートルまで投げる」「球速を上げる」。目標を一つひとつ達成することが自信となり、「打者との勝負が楽しくなった」と話す。

 各自が回すPDCAサイクル。そこから生まれる自覚が、昨年10月の中国大会であの逆転劇を呼び込んだと荒谷はみている。

 倉敷工(岡山)との準決勝。3点を追う八回、先頭の広本真己(2年)の右前ヒットをきっかけに連打などで2点をかえし、さらに代打の竹下偉磨琉(いまる)(2年)が左前2点タイムリーを放って逆転。主将の植松の打球は左翼線に飛び、走者一掃の3点タイムリーとなって試合を決定づけた。

 その勢いを、次の日の決勝ではね返したのが広陵だった。

 「力負けした」。そう痛感した植松は新たな月間目標を日誌に書き込んだ。「スイングスピードを130キロ以上にする」「握力を55キロ以上にする」。20年ぶりの選抜大会に向け、それぞれのサイクルが熱を帯びている。=敬称略(松尾葉奈)

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