一球入魂の記念試合 創部130周年の水戸一が磐城を招いて好試合
茨城県立水戸第一高校の野球部創部130周年記念試合が28日、福島県立磐城高校を招いてノーブルホームスタジアム水戸で開催された。合わせて245年という長い歴史を持つ伝統校同士が、キビキビとした投手戦を繰り広げた。
水戸一高の野球部は1891(明治24)年創部。全国でも屈指の古い歴史を誇る。早大の初代監督で「一球入魂」という言葉をつくり、「学生野球の父」と呼ばれる飛田穂洲(すいしゅう)さん(1886~1965年)の母校としても知られる。
スタジアムの正面入り口には、その飛田さんの銅像が立つ。記念試合には飛田家を代表して飛田憲生さんが駆けつけ、始球式の投手役も務めた。早大で飛田さんの指導を受け、監督を2度した石井連蔵さん(1932~2015年)も同校OB。今年、恩師に続いて野球殿堂入りした。
開会式では同校野球部OB会「水府倶楽部」の藤田知巳会長が、磐城高校を伝統(1906年創部)ある進学校で、甲子園を目指す学校として招待したと紹介。「両校の選手には野球を通して色々なことを学び、明るい社会を築く人間になってもらいたい。それが飛田先生の唱えた人間教育でもある」と呼びかけた。
ただ、水戸一の甲子園出場は1929、30、54年夏の3回だけ。新チームの部員は2年10、1年4の計14人しかいない。昨年春の甲子園大会に春夏計10回目の出場を決めていた磐城と、どんな試合ができるか。同校関係者は期待を込めて注目していた。
結果は、3―0で水戸一が快勝した。今秋から投手を始めた秋田啓人(2年)が相手を7安打に抑え、自身初の完封勝利を飾ったのだ。身長165・5センチ、体重61キロの右腕は、この日の最高球速が103キロ。「投球練習で出ましたね」と笑う。ふだんは70~90キロ台の直球と変化球を制球よく投げ、テンポよく打たせてとる。カーブの球速は遅すぎて計測できないのか、表示されない。「65キロぐらいのようです」という。
「こんなに遅いボールだけど、試行錯誤しながら、打者を打ちとることができる。それが痛快だし、見る人にも面白いと思ってもらえたらうれしい」と秋田は胸を張る。六回はわずか4球で三者凡退に抑えるなど、103球での完封。「マダックス(100球未満の完封=制球力に優れた元大リーガーの名前から)を意識したんですが」といたずらっぽく笑った。
「水戸一高の野球部は1球の精度、密度を大切にしています。ぼくも1球1球に持てる力のすべてを込めて投げています。1球で仕留める力を身につけたい」
バックも無失策でエースを支えた。
球場入りしたとき出迎えてくれた飛田さんの銅像。試合後、もう一度立ち寄ってみた。どことなく満足そうな表情に見える。それほど、見事な後輩たちの試合ぶりだった。(編集委員・安藤嘉浩)