49本塁打、145キロ…規格外1年生続々 秋の高校野球を振り返る
明治神宮野球大会が25日、幕を閉じた。高校の部は大阪桐蔭が初優勝を遂げ、今年の高校野球の公式戦がすべて終わった。来春の第94回選抜大会の出場32校を決めるうえで、重要な選考資料となる秋の大会を振り返る。
■スカウトも目を丸く
秋の頂点を争う神宮で目立ったのは1年生だ。話題をさらったのが、花巻東(岩手)の3番佐々木麟(りん)太郎。身長183センチ、体重117キロの巨漢はスイングの豪快さと柔らかさを兼ね備え、2本のアーチをかけた。
準決勝の広陵(広島)戦では3点を追う八回に高め速球を振り抜き3ランを右翼席へ。高く舞い上がった一発にプロのスカウトたちも目を丸くした。3試合で10打数6安打9打点、通算本塁打はすでに49。「3番としての責任を果たせた」と収穫の秋となった。
投手なら大阪桐蔭の初優勝に貢献した背番号14、前田悠伍が筆頭だ。近畿大会の3試合17回を防御率0・00。鮮烈な「全国デビュー」を遂げた。
左腕から最速145キロの速球、スライダー、チェンジアップの変化球をテンポ良く決める。敦賀気比(福井)との初戦に四回から救援し、無失点、10奪三振。準決勝は強打の九州国際大付(福岡)を相手に先発し、7回2失点。広陵との決勝は八回から救援して優勝投手となった。「緊張することなく、のびのびと楽しんで投げられた」と度胸もいい。
その快投ぶりは、同学年の強打者にも火をつけた。
花巻東との準決勝で3ランを放った広陵の4番真鍋慧(けいた)は、189センチ、89キロのすらっとした体形から腕をしならせる。「絶対に打ってやろうと思っていた」と決勝の八回、前田から右前安打した。九州国際大付の4番佐倉俠史朗(きょうしろう)は182センチ、104キロのどっしり型。こちらも、「(前田を)意識した」と準決勝の第1打席で高め速球を右翼席に運んだ。だが、その後の2打席は連続三振。意地がぶつかりあった。
彼らは入学後まだ1年に満たない。冬のトレーニング期間をへて、どこまで伸びるか。
■新風、吹き込む
地区大会には新風が吹き込んだ。
九州大会準優勝の大島(鹿児島)は、奄美市にある公立校で選手全員が離島出身だ。最速146キロ左腕の大野稼頭央(2年)を中心に県大会6試合のうち4試合でサヨナラ勝ち。九州大会でも大分舞鶴との引き分け再試合を制するなど接戦での強さが光った。21世紀枠で出場した2014年以来の選抜に期待が膨らむ。大野は「『島から甲子園』を目標にやってきた。チームワークはどこにも負けない」。
日大三島(静岡)は東海大会で初優勝し、38年ぶり2度目の選抜が濃厚だ。昨春、報徳学園(兵庫)を強豪に育てた永田裕治監督が就任。58歳の熱血監督に触発されて感情を表に出す選手が増え、エースで4番の松永陽登(はると)(2年)は「気持ちの大切さを学んだ」。それまで主力と控え組で分けられていた練習を一緒に行うことで、チーム内競争も激しくなり強化につながった。
準優勝の聖隷(静岡)は逆転劇の連続で春夏通じて初の甲子園出場に前進した。準々決勝の中京(岐阜)戦は2点を追う九回に3点を奪い、至学館(愛知)との準決勝は最大5点差をひっくり返してのサヨナラ勝ちだった。
秋の北海道を初めて制したクラーク国際は16年夏以来となる甲子園出場を引き寄せた。左腕・山中麟翔(りんと)(2年)と右腕・辻田旭輝(あさひ)(2年)の二枚看板が強み。全道5試合で計6失点と守り勝った。甲子園出場経験のない和歌山東は、県大会準決勝で今夏の全国王者・智弁和歌山を5―4で破って勢いに乗り、近畿大会準優勝と旋風を起こした。(山口裕起)
■各地区の秋季大会の成績
優勝 準優勝 4強
北海道① クラーク国際 旭川実 東海大札幌、国際情報
東北 ② 花巻東(岩手) 聖光学院(福島)八戸工大一(青森)青森山田
関東 ④ 明秀日立(茨城) 山梨学院 木更津総合(千葉)浦和学院(埼玉)
8強:東海大相模(神奈川)白鷗大足利(栃木)健大高崎(群馬)桐生第一(同)
東京 ① 国学院久我山 二松学舎大付 日大三、関東第一
北信越② 敦賀気比(福井) 星稜(石川) 小松大谷(石川)富山商
東海 ② 日大三島(静岡) 聖隷(静岡) 大垣日大(岐阜)至学館(愛知)
近畿 ⑦ 大阪桐蔭 和歌山東 天理(奈良)金光大阪
8強:東洋大姫路(兵庫)、京都国際、市和歌山、近江(滋賀)
中国 ② 広陵(広島) 広島商 岡山学芸館、倉敷工(岡山)
四国 ② 高知 鳴門(徳島) 徳島商、明徳義塾(高知)
九州 ④ 九州国際大付(福岡)大島(鹿児島) 長崎日大、有田工(佐賀)
*来春の選抜大会は出場32校。丸数字は出場枠。「関東・東京」「中国・四国」からはそれぞれ、さらに1校を選ぶ。近畿地区は神宮大会枠を獲得し、6から7に増えた。21世紀枠は3校