「もう根性の時代ではない」退任の日本高野連八田会長、健康対策に力
日本高校野球連盟の八田英二会長(72)が30日に退任する。2015年9月に第7代会長に就任し、18年には第100回の節目を迎えた全国選手権大会の運営にあたった。球児の障害予防や熱中症対策に特に力を入れ、昨年からは新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで難しいかじ取りを担った。宝馨・新会長(64)へのバトンタッチを前に、思いを聞いた。
――振り返って。
「やはり、コロナ禍で春夏の甲子園ができなかった昨年が最も印象に残っている。無観客を含めて可能性を探ったが、春も夏も断腸の思いで中止を決めた。球児たちが涙を流す姿を見るのが、一番つらかった。すでに選抜出場校は決まっていたので、なんとか彼らに甲子園の土を踏んでもらいたい、という思いがずっと頭に残っていた」
――それが8月の甲子園交流試合につながった。
「政府から(スポーツイベントの)ガイドラインが出て、甲子園球場も『空けておく』と言っていただいた。不安を抱く職員も多かったが、夜10時ごろまで高野連で話し合い、『よし、やろうやないか』と。6月10日、交流試合の開催を発表するとニュース速報が流れた。改めて甲子園は大きなものだと実感したし、その火を消さずにすみ、少し、心が軽くなった」
――今年、大会は復活した。
「選抜は観客上限が1万人。感染状況が悪化した夏の全国選手権は観客を学校関係者に限った。それでも、宮崎商と東北学院(宮城)で感染者が出て、辞退することになってしまった。胸が痛く、非常に残念だった」
――投球数制限の導入など任期を通じて健康面に力を入れた。
「健康問題には最大限の注意を払ってきた。『高校野球は根性でやる』という時代ではもうない。私は高校野球経験者ではないので、違った視点で取り組めたのかもしれない」
「野球は男性だけのものでもない。今夏、全国高校女子硬式選手権の決勝が甲子園で行われた。来年以降も続いて欲しいし、将来は春、夏の甲子園で女性審判にグラウンドに立って欲しい。私の就任時、ゼロだった日本高野連の女性理事もいまは6人です」
――今後の課題は。
「一番の懸案は部員数の減少です。私は『高校野球は教育の一環』との信念で運営にあたってきた。『甲子園に出る』という目的に向けて切磋琢磨(せっさたくま)しながら、協調性を身につけ、自己研鑽(けんさん)に励む。高校野球の教育効果、人格形成効果は非常に大きいと思う。それを学ぶ学生が減っていることに危機感を抱いている」
「一方でこれからも大人が情熱を持って、球児の夢の実現に手を貸せば、部員数はそんなには減らないのではないか。高野連とは球児の夢をかなえるための運営組織であり、教育団体だと思っている」
――球児へメッセージを。
「高校野球の3年間や甲子園出場がゴールではないはず。その向こうにゴールはあるはず。そこに向けて挑戦を続けて欲しい」(聞き手・山口裕起)