大阪桐蔭のタイミングのとり方 積極性が生んだ集中打 高嶋仁の目
ぼくは打撃で大切なのはタイミングだと思っとります。大阪桐蔭はそのあたりが実にしっかりしています。
今夏の甲子園大会でも、各打者が1番ええタイミングでボールを待っていたのが大阪桐蔭だったとぼくは思っています。結果は別にして、それだけ土台がしっかりしているということです。
あとは打席内での考え方です。球種やコースは何を狙うのか。捨てるボールはあるのか。引っ張っていい場面かどうか……。
厳しいボールを高校生がヒットにするのは難しい。甘い球を確実にとらえる。そこで必要になるのは積極性です。大阪桐蔭が逆転した六回。前田悠伍君の左犠飛も伊藤櫂人君の左中間二塁打も、初球をとらえました。七回に星子天真君が打った右越え二塁打も、第1ストライクです。
積極的だと、不思議と打ち損じも減ります。迷いがないからです。ぼくが監督をしていたときは、チャンスで打つべきストライクを見逃した選手をすぐに交代させたものです。積極性の大切さをすり込ませたいからでした。そのおかげで大学、社会人野球でもプレーすることができたと言っていた卒業生もいます。
敦賀気比が3点とった三回も、安打を打った4人はすべて第1ストライクを振って出ていました。見事な集中打です。敦賀気比も、投攻守にレベルが高いチームだと感じました。
ただ、大阪桐蔭の投手が前田君に代わった四回以降は、チャンスらしいチャンスをつくれませんでした。前田君は確かに素晴らしい左投手です。サイド気味な腕の振りから右打者の内角に投げ込む直球は角度がある。変化球の精度も高く、制球もいい。攻略するのは容易ではありません。そんなときは、今度は狙い球を絞り込むことが大切になります。振ってはいけないコース、球種を徹底しなければなりません。
敦賀気比はその徹底が少し遅れたように思います。そうすると、試合の流れが変わってしまうものです。スタンドから見ていると、よく分かりますが、ベンチで采配すると、うまくいかないものなんです。(前・智弁和歌山監督)