「エースたるもの」 ドラフト1位の先輩の言葉を胸にエースが力投
(16日、高校野球秋季近畿地区大会1回戦 市和歌山2―1神戸学院大付)
市和歌山の背番号1、米田天翼(つばさ)(2年)は9イニングを投げきった後、心地良さそうに額の汗をぬぐった。「エースたるもの。最後はそんな思いで投げました」
来春の選抜大会につながる近畿地区大会。神戸学院大付との1回戦は「緊張して腕が振れなかった」。立ち上がりから直球は浮き、変化球は曲がらず、リズムに乗れない。四回に四球からピンチを招いて同点に追いつかれるなど、五回まで毎回走者を出す苦しい投球が続いた。
立ち直るきっかけをつかめないまま五回が終わり、グラウンド整備中にベンチで座っている時だった。ふと、先輩の姿が思い浮かんだという。今月11日のプロ野球・ドラフト会議で横浜DeNAベイスターズから1位指名された小園健太(3年)だ。小園はいつも言っていた。「エースたるもの、どんな状況でもチームを勝たせなくてはいけない」と。
その言葉を思い出し、背番号1を受け継いだ右腕は吹っ切れる。「強気で向かっていった」と、六回のマウンドからは別人のように。最速148キロの直球は球威が戻り、小園から教えてもらったカットボールとツーシームも低めに決まった。それまで不安そうに見守っていた半田真一監督も、「この回の最初の2球を見て、これなら大丈夫だと安心しました」。
六回からの4イニングは走者を1人も許さず、7奪三振。完投でチームを準々決勝に導き、2年連続の選抜出場に向けて前進させた。
米田も甲子園の先に、プロの世界を夢見ている。「僕も小園さんのような絶対的なエースになりたい」。あこがれの先輩の背中を追いかける。(山口裕起)