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LINEの知らせ、消えた春夏連覇 東海大相模のエースが今思うこと

2021年10月10日08時30分

 「キャッチボールがしたい」

 コロナで「高校最後の夏」を奪われた左腕に芽生えたのは、野球を始めた頃の純粋な感情だった。

 今春の選抜高校野球大会を制した東海大相模の石田隼都(はやと)。春夏連覇を目指した今夏は、神奈川大会の途中で、チームが新型コロナウイルスに集団感染。準々決勝当日の7月24日朝に、出場辞退が発表された。

 あれから約2カ月。丸刈りだった髪が少し伸びた18歳は9月22日、プロ志望届を提出した。

 「すごい高いレベルの人が集まるところ。東海大相模に入ったのも、『高いレベルでやりたい』という思いから。小さい頃からそれは変わらないです」

 小学生の頃から、強打者が放つオーラを感じると、「抑えてやる」と燃えた。高校生として、その最高の舞台が甲子園だった。

 選抜では5試合で29回3分の1を投げて無失点、2完封。優勝投手になった。

 春夏連覇をかけて挑んだ今夏。神奈川大会の5回戦まで石田は無失点だった。「チームの雰囲気も上がってきた」。そんな手応えを感じ始めた7月23日夜、門馬敬治監督(この夏限りで退任)から、チームのLINEにメッセージが届いた。

 メンバーに多くのコロナ陽性者が出たこと、翌日の準々決勝を辞退すること、寮の部屋で待機することなどが書かれていた。

 石田はあの夜の心境をこんな言葉で振り返る。

 「試合がなくなるっていうのを、ちゃんと考えられないというか。負けていないので悔しい気持ちにもならない。明日から何をやろうというか、目の前に何もなくなっちゃったというか、そんな気持ちだったと思います」

 約2週間の隔離生活を終えると、自宅のある栃木県に帰った。卒業後はプロか大学進学か。どちらにせよ、立ち止まってはいられない。体を少しずつ動かそうと思ったとき、自然と芽生えた感情が「キャッチボールがしたい」だった。

 小学3年生で野球を始めてから、こんなに球を握らなかったのは初めてだった。最初は父親と、そして地元の仲間と白球を交わした。

 「キャッチボールを始めたときは、真っすぐ飛ばなくて。感覚が狂っていてびっくりしました」

 時間があるときは、テレビで甲子園を見た。「雨も多くて、ピッチャーは苦しそうに投げていた。自分もここでやってみたかったなって。勝てるか分からないけど、どうなっていたかなって。同じ左腕の明徳義塾の代木(大和)くんがすごいなと思った。内角の真っすぐがきれいだなって」

 新学期が始まっても、オンラインの授業が続いた。甲子園出場への道が断たれた7月の「あの日」から9月下旬まで、仲間が全員で集まる機会は一度もなかった。

 それでも、石田は前に進み始めている。夏休みが終わると寮に戻った。オンラインの授業を学校の教室で受け、放課後は下級生の練習に交ざる。筋力トレーニング、ダッシュ、打撃投手……。

 「自分なりに、高校野球は終わったと整理して。次のレベルで、そこでまた新しい自分を出せる準備というか、切り替えようとやっています」

 今、門馬監督からよく聞かされた「一日一生」「頑張るのはいつも今」という言葉の意味がよく分かる。

 「あのとき、野球が目の前から一瞬で消えた。一日一日を大切にしないといけないというのを実感しました。今日できることは、今日やりたい。無理はしないようにとは思うけど、できることを一日一日やっていこうという気持ちです」

 プロ野球のドラフト会議は10月11日に行われる。

 指名を待つ石田の武器は「公式戦無失点」の投球術だけではない。18歳にして、「今日できる努力」の尊さ、大切さを知っていることだ。(山口史朗)

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