出られなかった甲子園、高知の森木大智君が語る
2021年10月1日10時00分 朝日新聞デジタル
最速154キロの直球を誇り、高知高校のエースだった森木大智君(18)が、10月11日に迫ったプロ野球ドラフト会議での指名を待ち望んでいる。高校入学直後から公式戦に登板し続けながら、甲子園にはあと一歩届かなかった。野球部の仲間たちやライバルの明徳義塾への思い、プロの世界への意気込みを聞いた。
――今夏の高知大会決勝で敗れた後、甲子園の試合は見ていましたか
「試合を見るたびに甲子園に出られたらという心残りはあったし、やっぱり出たかった」
「悔しさはありました。甲子園に出場すると言ったのにできなかった。有言実行できないのはつらい。でも甲子園を目指してやった結果だということを常に言い聞かせていました」
――甲子園を見ていて、印象に残っている試合は
「一番印象に残っている試合は、(2回戦の)近江対大阪桐蔭。近江にはチーム全員で勝つという姿勢が見られた。どんだけ点差が開いても着実に1点を取りにいく、執念深い野球だなと。あれが高校野球のおもしろさなんだと思います」
――すごいなと思う投手はいましたか
「盛岡大付(岩手)の渡辺翔真君。球速はそこまでないけど、変化球も真っすぐも、いいコースをついて相手に打たせる。すごくうまいピッチングをするなと思った。あと、明桜(秋田)の風間球打君。あの魅力あるボールは意識してしまう」
――対戦したかった打者は
「智弁学園(奈良)は打線の重圧感がテレビで見ても伝わったので、投げてみたかった。中でも一番注目されていた前川右京君とは、ぜひ対戦してみたかった」
――高知代表の明徳義塾の戦いぶりはどうでしたか
「明徳は本当に強いと思ったし、監督の馬淵(史郎)さんが目指している野球に選手がついていき、その思いを体現できるのは、とてもすごいと思う」
――顔なじみの選手もいますが、どうでしたか
「代木大和君はピッチングも安定していたし、勝ち越しホームランも打って、気持ちの面でも強いと思った。小学校の時から知っている梅原雅斗君も勝負どころでファインプレーがあった。日ごろの練習があるから、アグレッシブなプレーも出たと思う」
――明徳義塾と高知。両校の差はどこにあったのか
「気持ちの強さが僕たちには足りなかった。明徳を倒して絶対に甲子園に行くんだと思っていたけど、熱量が足りなかった。しんどいときに頑張るか、頑張らないかの差もあったんだと思う」
――自分自身に足りなかったところは
「日ごろの練習量。1球の精度を高めることをテーマにしていたけど、投げ込みの少なさなど足りないところがあった。いかに試合を意識して練習を出来るかというのが大事だと改めて思いました」
――甲子園に出られなかったことは、これからの野球人生にどう影響しますか
「甲子園には行けなかったけど、諦めず前向きに全力で取り組めたという経験が、これから先も絶対に必要になる。それを、野球の神様が教えてくれたんだと思います」
――新型コロナウイルスの感染が広がり、存分に野球ができない時期が続いた
「いつか思いっきり野球ができる日が来ると信じていた。どんなにしんどくても仲間がいるので心強かったし、みんなと野球ができる喜びはモチベーションになった」
――仲間に対しては
「個性的なメンバーが多く、ぶつかることもあった。でもそれは同じ方向に向かって全力でやっているからこそだと思う。そういう仲間がいてくれるだけで、とても心強かった」
――入学の時から、そういう思いでしたか
「1年生の時は自分が頑張ればチームの結果も付いてくると思っていた。独りよがりというか、自分中心でした」
――その考えが変わったきっかけは
「2年のころ、結果が出ない時期があり、仲間が叱咤(しった)激励してくれたが、一生懸命やっているのに、なんで厳しいことを言われなくちゃいけないんだと最初は嫌々聞いていた。でも自分が良くなるためには考え方を変えよう、言ってくれるのはありがたいと考えるようになった」
「けがでプレーできない日が続き、自分自身を客観的に見つめ直す時間が増えたことも影響した。自分がどうすればチームが勝てるのかを考えた。野球はチームスポーツなので全体が同じ方向に向かってやっていかないといけないと思うようになってから態度や振る舞いが変わりました」
――プロ注目のエースであり、仲間にも弱みを見せられない面があったのでは
「弱みを見せたくはなかった。チームを引っ張っていく立場だと思うので、自分が弱音を吐いてしまってはチームの士気が下がるし。だから家族には結構言いました。特に父には、よく話しました。そうやって受け入れてくれた両親には感謝です」
――プロ志望届を出しました
「日本を代表する選手になりたい。プロに行って、最終的にはメジャーで活躍し、『日本を代表する選手は森木大智だ』と言われたい。勇気や希望、感動を与えられる選手になりたい」
――プロでやっていく自信はありますか
「自分の野球が通用する部分もあれば、通用しない部分もあると思う。でも、自分の真っすぐがどれだけ通用するか、今からすごく楽しみにしています」(聞き手・羽賀和紀)