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勝てないチームだった近江 地獄メニューで手にした団結

2021年8月31日09時00分

 29日に閉幕した第103回全国高校野球選手権大会(日本高校野球連盟、朝日新聞社主催)で、滋賀代表の近江は4強に躍進した。しかし、今年のチームの歩みは順風満帆ではなかった。3年生たちが厳しい練習を乗り越え、聖地・甲子園への切符を勝ち取っていた。

 「彼のこれまでの苦労が最後の夏につながった。そんなストーリーの大会になる気がするんです」

 6月14日。この夏、初めて近江を訪ねたとき、多賀章仁監督(62)は、そんなことを語っていた。

 「彼」とは、春山陽生君のことだ。100回大会の開会式で選手宣誓をする中尾雄斗主将(当時)にあこがれ、「近江でキャプテンをやりたい」と入学した。

 昨年から新チームで念願の主将になったが、それは苦難の始まりだった。

 近江は昨夏まで県内公式戦で30連勝していた。中尾主将の代に始まった記録だ。ともに下級生から主力だった有馬諒(りょう)さん(現関大)、土田龍空(りゅうく)さん(現中日)が主将を継ぎ、数字を伸ばしてきた。

 昨秋の県大会、春山君は初めてベンチ入り。背番号は1桁だったが、途中出場が多かった。決勝でサヨナラ負けを喫し、記録が「34」で途絶えた。続く近畿大会も初戦で力負けした。

 一冬越えて春の県大会。試合ごとにメンバー変更でき、多くの選手が力を試すはずだった。3回戦で終盤に逆転されて1点差で敗れた。

 「俺が悪かった」。春山君は競争の機会を奪ってしまったとわびた。そして、「夏はこんな思いはさせない。ついてきて欲しい」。野球部伝統の、地獄の練習メニューを増やすことを決めた。

 三角ダッシュ。右翼線、左翼線にコーンを立てて、本塁との三角形の外周を1分以内に走りきる。インターバルは1分間。練習の一番最後に体にむちを打つ。

 近年は3~6本に減らしていたが、従来の9本に戻した。1本につき、1イニングを守る体力を養う意味が込められている。例年は主力だけの練習だったが、主将の背中を見て、3年生全員が歯を食いしばった。

 夏の躍進の理由に、多くの選手がこの練習を挙げた。春は右ひじのけがで無登板だった岩佐直哉投手は、「精神が鍛えられ、ピンチに動じなくなった」。

 夏の滋賀連覇だけは、止めたくない。春山君は「挑戦者の気持ちだけど、正直プレッシャーはある」と、滋賀大会前に語っていた。

 選手たちは悲壮な覚悟で戦っていた。完勝した2回戦後のインタビュー。井口遥希君は「自分たちは強くない。泥臭く戦っていく」と、公式戦初本塁打を放った試合だったのに語気を強めた。

 決勝、春に敗れた立命館守山にリベンジし、優勝を果たした。安堵(あんど)の気持ちがあふれ、多くの選手が涙を流した。

 多賀監督が思い描いていた春山君の物語は、おそらく甲子園出場がエンディングだった。「選手には感謝している。甲子園では勝敗を度外視して、笑顔いっぱいに戦って欲しい」と穏やかに話していた。

 8月3日の抽選会。近江は強豪ひしめく厳しいブロックに入った。

 だが、最上級生が手にした団結の力は、就任33年目のベテラン指揮官の想像をも上回っていた。

 春山君が引いたくじの番号は「41」。3年生の男子部員36人と女子マネジャーの3年生5人を足し合わせた数だった。(安藤仙一朗)

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