智弁和歌山エース、イチロー氏に感謝 激励の言葉を胸に
(29日、高校野球選手権大会 智弁和歌山9-2智弁学園)
智弁和歌山の背番号1、中西聖輝(まさき)の出番はピンチでやってきた。
2点リードの四回無死一、二塁。「ベンチの監督が『頼むぞ』という視線だった。堂々と投げようと思った」。犠打で1死二、三塁となり、さらに気持ちのギアが上がる。普段から大事に練習してきたフォークで2者連続の空振り三振に。自分が磨いてきた制球力を信じ、腕を振った。
中谷仁監督は言う。「甘えん坊のところがあってふて腐れることもあった。1試合ごとに成長してくれた」。身長182センチ、体重91キロ。力強さだけでなく、変化球も駆使して打者と駆け引きができる柔軟さを併せ持つ。3回戦、完投まであと1死で乱れて降板した。「チームが勝つために投げるのがエースだと再認識した」。糧にした。
「ちゃんとやってよ」
昨年12月、指導に来てくれた元大リーガーのイチローさんから言われた言葉を胸に刻んできた。自分がなぜそうしたのか、一つ一つの行動を説明できるように心がけてきた。丹念な投球でスコアボードにゼロを並べて迎えた九回2死、八つ目の三振を奪い、ほおを緩めた。「ちゃんとできました」。そう伝えたい。(坂名信行)