智弁学園、初優勝をかけてきょう決勝 智弁和歌山と
第103回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)の奈良代表、智弁学園は28日、準決勝で京都国際を3―1で下し、初の決勝進出を決めた。29日の決勝(午後2時開始予定)で、智弁和歌山と戦う。
智弁学園は2016年春の選抜大会で優勝している。夏の全国選手権大会を制すれば、奈良県勢としては1990年の天理以来31年ぶり3度目となる。
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夏の甲子園では、26年前の準決勝進出が最高だった智弁学園。その4強の「壁」をついに越えた。
0―0で迎えた四回1死一、三塁。絶好の先制機を迎えたが、植垣洸(こう、3年)のスクイズは失敗、三塁走者がアウトになってしまう。一回も二回も併殺で流れをつかめず、好機を生かせない場面が続いた。
植垣はなんとか四球を選び、2死一、二塁。打席に先発投手の小畠一心(いっしん、同)が入った。「たぶんみんな自分には期待してなかった」と語る小畠への4球目、スライダーが真ん中高めへ。直球を狙えと指示があったが、「体に向かってきたボールを打ったら、当たりました」と小畠。
打球は右翼から左翼へ吹く浜風にも乗って、無人の左翼席へ。小畠は右手で小さなガッツポーズ、左手で左翼方向を指しつつ、驚いた表情のままダイヤモンドを回った。今大会初安打が3点本塁打になった。
小畠の一打のように、この日の智弁学園は「風」を味方にしたかもしれない。
七回まで散発3安打、1失点の小畠は八回2死一塁で、1番打者に中堅方向へ打たれる。「風で戻ってこい」。そう願ったように、押し戻された打球を中堅手の森田空(3年)がつかんだ。森田は五回も1死三塁からの中堅への大飛球をフェンス際で好捕し、犠飛で食い止めている。森田は「レフト方向のフライは伸びる。ライト方向は失速する。それを頭に入れながら一歩目を切ると意識していました」と振り返る。
その森田はこの日3安打に加え相手失策、四球と全5打席で出塁。5試合10安打と好調だ。小坂将商(まさあき)監督から様々な助言をもらってきたことが生きている。「自分の中でかみ砕いて夏に向けてやってきた。成果が出てると思っています」
捕手の植垣も「風」を意識した。心掛けたのは、小畠の直球を生かす配球。「一心の球威と風があって、長打はあんまりないと思ったんで、どんどん高めも思い切って使いました」。今大会2本塁打の京都国際・中川勇斗(同)を無安打に封じ込めるなど、好投を引き出した。
3番、4番打者に安打が出ず、チームで5安打ながら、しっかりと勝ちきった智弁学園。目指す日本一まで、あと1勝だ。(米田千佐子)