盛岡大付エース、八回2死までパーフェクト 2連続完封
2021年8月22日19時51分 朝日新聞デジタル
(22日、高校野球選手権大会 盛岡大付4-0沖縄尚学)
どんな状況も、盛岡大付の渡辺翔真にとっては学びと反省の場だ。それがたとえ、「史上初」の偉業を逃した直後でも。
八回2死。外角を狙った133キロが、少しだけ中に入った。「正直、(記録を)意識しすぎて。コースを狙った分、直球の質が落ちてしまった」。24人目で許した初の走者は、中前安打。冷静に原因を分析していた。
夏の全国選手権103回の歴史で、完全試合を達成した投手はいない。「六回くらいから意識した」という快投は、小さい頃から学び続けた成果だった。
「キャッチボールが大事だ」と、子どもの頃から色んな人に言われた。聞き流さず、1球1球大事に投げていたら制球力がついた。
一回の先頭打者を見逃し三振に仕留めた外角低めいっぱいのスライダーも、打者を何度も詰まらせた内角直球の制球も「(キャッチボールの)積み重ねが大きいと思います」
投手を本格的に始めたのは2年生の秋から。下級生の頃、捕手以外のポジションはほとんどやった。投手への思いがあったから、中堅手で試合に出ると、先輩の投球や相手校の打撃を常に観察した。「ピッチャーにつながることを経験している」という意識で。
野球だけではない。学校の成績は常にトップクラス。学年1位を何度も取った。
この日、本塁打を放った4番の小針遼梧(とおご)が言う。
「自分は自主練をやって夜が遅くなると、シャワーを浴びて寝る。渡辺は夜12時から勉強しながら、ストレッチもしています」
エースの学びの姿勢は高校最後の夏も続く。球速は140キロ前後と特別に速くはない。岩手大会はよく打たれた。映像を見ながら振り返り、「腕をしっかり振ること、コースに投げ切ることなど、基本的なことを見直した」。
そして甲子園で達成した2試合連続完封。「きょうはランナーが出る場面が少なかった。ランナーが出た際の投球や、あとはコースを突けていない場面も何度かあった。そういうところを確認したい」
大阪桐蔭―近江(滋賀)の勝者と当たる次なる戦いに向け、修正ポイントがすでに頭に浮かんでいた。(山口史朗)