京都国際、初戦制す 第103回全国高校野球選手権大会
第103回全国高校野球選手権大会で、京都国際は19日、5大会連続出場を誇る前橋育英(群馬)との初戦を1―0の接戦で制した。春の選抜大会に続き、夏の大会も初出場で初勝利。京都国際は、大会第11日の第1試合で、西日本短大付(福岡)と二松学舎大付(東東京)の勝者と対戦することになる。
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浜風のない曇天の空を、4番の一打が切り裂いた。 二回、先頭の中川勇斗(はやと)君が打席に立った。「相手投手はスライダーがいい。その球を狙っていた」。2ストライクと追い込まれてからの5球目、真ん中に入ってきたスライダーを強くたたいた。
「ちょっとこすったかな」。感触はよくなかった。それでも一塁に走りながら、高く上がった打球と、追いかける左翼手を交互に目で追い、「入ってくれ」と祈った。ボールはスタンドに吸い込まれ、一塁を回ったところで、大きく右手を突き上げた。
中川君は京都大会決勝でも、逆転本塁打を放ち、長打力を見せつけた。そのパワーの秘訣(ひけつ)は、新型コロナウイルス感染拡大による休校期間中に、一人で取り組んだ筋トレだった。
2年生になったばかりの昨年の4月。臨時休校で1カ月半ほど愛知県の実家に戻るとき、「休校中は家で筋トレをしてパワーをつけよう」。そう決めて、部室から15キロのダンベルを持ち帰った。
「自分の部屋で一日中、数え切れないくらいダンベルでトレーニングをした」。みるみる腕は太くなり、練習着の袖が張り裂けそうになるほどだった。1年生のころは0本だった本塁打も徐々に増え、この日の一打で練習試合も含め、通算17本目となった。
捕手として、本塁打以外でもチームを引っ張った。一回、いきなり無死一、二塁のピンチを迎えた場面では、2年生投手の森下瑠大(りゅうだい)君の元に向かい、「大丈夫、大丈夫」と声をかけ、5連続奪三振につなげた。最後の打者を打ち取った後は、喜ぶ前に転がったバットを拾って手渡し、相手への敬意も忘れなかった。
中川君は、「森下を助ける本塁打を打ててよかったが、今日はもっと打線が働くべきだった。まだ1勝。満足はしていません」。(吉村駿)