後輩に伝えたい 「甲子園出場はゴールじゃない」
2021年8月10日09時00分 朝日新聞デジタル
【山口】甲子園の舞台に立った自分だからこそ伝えられることがある――。朝田走(はしる)さん(22)はそんな思いでこの春、高川学園に戻ってきた。寮監として部員の生活を律する傍ら、グラウンドでも指導にあたる。選手にとっては、野球のことも生活のことも話せる、年の近い先輩のような存在だ。
7月31日、朝田さんはグラウンドで部員の前に立っていた。「生活の態度からもう一度見直そう。甲子園出場はゴールじゃない」
2016年、高川学園が初めて夏の甲子園に出場した時の三塁手。初戦で履正社(大阪)と対戦し、敗れた。「甲子園に出られたことに浮かれていたのでは」と悔いが残った。高川学園を卒業後、天理大へ進学。教員免許を取得して母校に戻ったのは「先輩として伝えられることがある」と思ったからだ。
中野天嗣(てんじ)君(3年)は、グラウンドで朝田さんの話を聞いて、「甲子園出場を決めたことはうれしかったけど、改めてここからスタートだと思い直すことができた」と振り返る。
グラウンドのバックスクリーンには「日本一まであと6勝」の文字がある。甲子園の舞台に立ってから足りなかったことに気づくようでは遅い。朝田さんの言葉を背に、選手たちは「1勝の先」をめざす。(寺島笑花)