7月27日の高校野球 兵庫
2021年7月28日04時00分 朝日新聞デジタル
第103回全国高校野球選手権兵庫大会(県高校野球連盟、朝日新聞社主催)の第19日が27日あり、2球場で準決勝2試合が行われた。29日の決勝(午後1時、ほっともっとフィールド神戸)は、春夏連続の甲子園出場を目指す神戸国際大付と、12年ぶりの全国選手権を狙う関西学院の顔合わせに決まった。神戸国際大付は、報徳学園に6―2で逆転勝ち。関西学院は社に4―3で競り勝った。
28日は休養日で試合がない。
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甲子園まであと二つ。先発マウンドに上がった2年生投手の顔は、緊張でカチコチだった。マスク越しでもよくわかった。
一回表、四球などで2死一、二塁。ベンチから伝令が出たタイミングで、社の捕手、宮川夢亜(むうあ)君(3年)は、マウンドの芝本琳平(りんぺい)君(2年)に声を掛けてあげた。「技術はあるから、自分を信じて」
次の打者は中飛に打ち取って、ピンチを脱した。
自分の良いところ。それは、人を観察して、その人に合った言葉をかけられることだと思っている。
社は今大会、2、3年生の投手5人が代わる代わる登板し、勝ち上がってきた。その全試合で宮川君はマスクをかぶり、投手陣を引っ張ってきた。
どうすれば、投手が前向きな気持ちになれるか。「四球でもいいから厳しいボールで攻めていこう」「気を抜かないで」。決して怒ることはせず、鼓舞することを心がけてきた。
ピンチの時こそ問われるのが、普段のコミュニケーションという。寮生活のチームメートとは、まるで家族のようだ。「普段の顔を知っている」。だから、試合中の表情の変化は余計に伝わってくる。
打席でも、頭に浮かんだのは投手のことだった。
1点をリードする四回裏、2死二塁の場面。準決勝という大きな舞台で投げている2年生を楽にしてあげたくて、「絶対に走者をかえす」と心に決めていた。
ねらい通りの直球。打った瞬間、手応えがあった。左前打で二塁の走者が生還。リードは2点に広がった。
社は五回裏にもう1点追加したが、六回表に同点に追いつかれ、エース足立幸君(3年)を投入してしのいだ。それでも八回表、適時打で1点を勝ち越された。
唯一残った公立校だったが、準決勝で姿を消した。
宮川君は今大会、21打数11安打。6試合中3試合で打点もあげた。後輩たちには「絶対に甲子園に行ってもらい、てっぺんの景色を見せてほしい」と背中を押した。(大下美倫)