7月26日の高校野球 三重
三重大会の決勝が26日、四日市市営霞ケ浦球場であり、三重が6―5で競り勝ち、7年ぶり13度目の優勝を決めた。津田学園は中止の昨夏を挟んで2大会連続の甲子園出場を狙ったが、及ばなかった。2年ぶりとなる全国選手権大会は8月9日、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する。
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1点差まで詰め寄られた九回表2死二、三塁。ピンチの場面で、鋭い打球が二塁手のグラブをはじいた。
「抜けやんといてくれ。なんとか捕ってくれ」
一塁を守っていた三重の池田彪我(ひゅうが)君(3年)が祈ると、二塁手はすぐに体勢を立て直して捕球。自らに送られた白球は、勢いよくグラブに収まった。
「アウト」。審判の宣告を耳にすると、喜びで投手の元へ走り出した。
主将として部員115人のチームをまとめる。新チームは順調な滑り出しだった。昨秋の県大会で優勝、東海大会でもベスト4の好成績を収めた。
結果が良かった分、メンバーは固定されるようになった。気の緩みが目立ち、練習後の片付けをしなかったり、控え部員がボール拾いをしてくれることが当たり前になったりしていた。
「レギュラーの人がもっと率先して動いてほしい」「応援されないチームになっている」――。春の県大会で1回戦コールド負けしたことをきっかけに、控え部員の不満が一気に噴出。3年生56人の緊急ミーティングで、池田君はレギュラーを代表して謝罪し、言った。「みんなから信頼されるようなチームになろう」
部員の行動はこのミーティングの翌日から大きく変わった。レギュラーメンバーは、練習をサポートしてくれた控え部員に感謝の言葉をかけるようになった。控え部員もミーティングを開き、チームのためにすべきことを話し合った。
迎えた決勝、粘り強さが持ち味の津田学園に何度も流れを持っていかれそうになったが、「気持ちやぞ」と仲間と声をかけ合った。
「苦しい試合だったが、全員が一つとなって攻め続けられた。甲子園のために2年半、頑張ってきてよかった」。次はいよいよ夢の大舞台に挑む。(岡田真実)
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3点を追う七回表、津田学園の主将、犬飼慎之介君(3年)が内野ゴロに倒れると、次打者の神田剛志君(2年)は、「先輩の分を必ず取り返す」という気持ちで打席に立った。3球目を振り抜くと、打球は右越え三塁打に。その後の得点につながる一打となった。
犬飼君は毎朝5時半ごろから朝練を続けてきた。そんな地道な練習が勝負強い打撃につながっていると、神田君は尊敬していた。
春の県大会後、神田君はもっとチャンスで打てるようになりたいと、「一緒に朝練をやらせてほしい」とお願いした。犬飼君はその申し出を快諾した。
今大会中も一緒に朝練を続けた。打撃の調子がいい方が悪い方に修正点をアドバイス。「あいつが打てなかったらおれが」と補い合う気持ちが生まれてきた。
七回の神田君の渾身(こんしん)の一打は、その思いが詰まったものだった。
続く八回、今度は犬飼君が右越え二塁打を放った。試合後、「神田の『いけるぞー、いけるぞー』という人一倍大きな声が打席に届いて心強かった」と振り返った。一方、神田君は「犬飼先輩ともっと長く野球をやりたかった」と寂しそうな表情を浮かべた。
2人はこの日、ともに長打を含む2本の安打を放った。甲子園を目前に試合は惜しくも敗れたが、これまでの努力が実った証しだ。(佐々木洋輔)