7月24日の高校野球 石川
昨夏の独自大会を制した日本航空石川が敗れた。逆転に次ぐ逆転のシーソーゲーム。選手たちは試合終了直後、立ち上がることができなかった。26日は、ついに決勝。優勝候補の呼び声高い小松大谷と、日本航空石川に打ち勝ち、勢いに乗る金沢がぶつかる。
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2点を追う九回、1死二塁。遊学館の主将の新保朋也(3年)は、5球目を振り抜いた。打球は右前に転がり、二塁走者が本塁を踏んだ。「どんな球を打ったか覚えていない」。それほど無我夢中だった。
2001年の創部以来、チームを春夏計7度、甲子園へと導いた名将・山本雅弘(70)に実力を買われ、入学直後から捕手として試合に出場してきた。だが、2年で右肩を負傷し、昨年12月に手術をした。
「新保の代でラストにする。お前らと甲子園に行きたい」。数カ月ほど練習を離脱している間、山本から自身の退任を告げられた。野球の「ありとあらゆることを教えてくれた」恩師を、「全国大会で胴上げする」と誓った。
そしてこの夏――。肩は完治せず、一塁手での出場だったが、チームは2、3回戦で、持ち味の「強打」を発揮し、計32安打で相手を圧倒した。新保もこの試合を含め、11打数5安打と活躍した。だが、打線はこの日、相手投手の吉田佑久(3年)らを打ちあぐね、残塁を重ねた。
勝つことにこだわった理由はもう一つある。
22日の準々決勝で戦うはずだった星稜が、部員の新型コロナウイルスの感染で、出場を辞退。前日に、星稜のエース野口練(同)から電話で「俺たちの分まで勝ってくれ」と託されていた。
「山本監督に、星稜に、申し訳ない」。甲子園に行けないと思うと、悔しさがこみ上げてきた。
(敬称略)(小島弘之)