松井さんの公式戦本塁打数まで1本 日本航空石川・内藤
米大リーグでエンゼルス大谷翔平選手が、元ヤンキース松井秀喜さんの本塁打記録を更新したこの夏、全国高校野球選手権石川大会にも、高校時代の松井さんの記録を塗り替える勢いの「飛ばし屋」が現れた。新型コロナウイルスによる練習自粛も乗り越え、甲子園に向けてアーチをかける。
身長180センチ、体重100キロ。日本航空石川(輪島市)の内藤鵬(ほう)君がバットを構えると、2年ながら主砲の風格がただよう。17日の3回戦では2本塁打。1本目は左翼の場外へ、2本目ももう少しで場外だった。「次も甘い球は全部ホームランにする。ミスはしない」
これで公式戦の本塁打は計7本。同じ石川県で星稜(金沢市)の松井さんが2年の夏までに春夏秋の県大会で放った8本まであと1本に迫った。圧巻は今春の県大会。5試合で大会新記録の5本塁打を放ち、チームを準優勝に導いた。うち4本は場外弾だった。
「偉大な松井さんと比べられるとプレッシャーです」と内藤君は照れる。一方で「自分を大谷選手として、大会で活躍する姿はたまーにイメージしてます」と笑顔で明かす。
愛知県出身。小学5年からクラブチームで本格的に野球を始めた。「とにかく飛ばせ」。所属チームの指導者にそう教わった。その恩師は、中学でも試合を見に来てくれていたが、中学1年の時に急逝した。いまも帰省時には墓参し、かけてもらった言葉を思い出している。
高校進学時には20校から声がかかり、強打のチームカラーが気に入って航空石川を選んだ。重さ160キロでスクワットをし、素振りや打撃練習などでバットを1日1千回振る。「チーム一の大食い」としてご飯3~4杯を食べた後にカップラーメンも。ついに体重は100キロを超えた。
満を持して2年生の夏を迎えるはずだった。だが、5月下旬、能登半島の先端に位置する学校の寮を中心に新型コロナウイルスのクラスターが発生。感染者は100人を超えた。
寮で2~3週間の自粛生活を余儀なくされた。部屋にバットを振るスペースはなく、体幹トレーニングなどで体力を維持しながら、夏の大会にこぎつけた。中村隆監督も「クラスターを言い訳に勝てないなんて、かっこわるいでしょう」と外向けには強気を示した。
だが、今月11日の大会初戦は六回表に同点に追いつかれる苦しい戦い。内藤君にも安打は出たが「とらえたと思っても詰まっていた。自分の打撃ではなかった」。
それだけに17日の試合後は「一本出て、自分もチームもリラックスできた」と元気が戻った。(小島弘之)