7月22日の高校野球 石川
県立野球場に焼けるような日差しが照りつける。第1試合の金沢―鵬学園は、ロースコアの好勝負となった。一方の第2試合は、野球部員の新型コロナウイルスの感染で星稜が出場を辞退したため、遊学館の不戦勝に。4強が出そろった。
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四回、快音が響き、打球は右翼線を抜けた。
打った金沢の主将中川大依(3年)は、全力で駆け抜け三塁に達した。チーム初の安打は先制点につながる長打だった。昨秋からチームで続けてきた「1日700回のスイング」の成果が出ていると、感じた。
だが、中川は塁上でにこりとも笑わなかった。「もともと表情は変わらないタイプなんで」。野球へのストイックさ。それが言葉からにじみ出ていた。
「携帯電話は大人になっても触れる。今は、野球を、青春時代を、どっぷり謳歌(おうか)してほしい」
監督の武部佳太(40)がそう語るように、野球部では代々、学校や試合では携帯電話を所持しないルールだ。代わりに、中川は、通学の電車の中で、野球ノートを見返したり、夏の甲子園で優勝経験を誇る日大三の監督小倉全由の著書を読んだりすることに時間を使った。学校から15キロほど離れた川北町の練習場に行く際は、部のバスに備え付けられたモニターで、過去の甲子園大会の映像を見た。
スマホに目を落とす時間を、野球に充てる――。武部の言葉通り、中川は野球にどっぷりつかった。そして、その成果が出たのがこの夏だった。
六回にも中越えの二塁打を放った。
「一人の百歩より、百人の一歩」。武部が教えてくれた言葉を胸に刻んでいる。自身の活躍よりも、チームが前に進むことが大事だ、と。だから「チームの主将として表情を変えないようにしているんです」
二塁に到達後も、涼しい顔をしていた。(敬称略)(小島弘之)