スポブルアプリをダウンロードしよう

  • Sportsbull Android App
  • Sportsbull iOs App

すべて無料のスポーツニュース&動画アプリの決定版!

QRコードを読み込んでダウンロード

Sportsbull QRCode

昨夏あと一歩だった頂点へ 先輩への恩、「甲子園」で返す

2021年7月18日18時05分 朝日新聞デジタル

 「これは3年が残してくれた宿題だ」。昨夏の山口県独自大会の決勝。1対6で敗れた試合後のミーティングで、桜ケ丘の岡嶋徳幸部長(47)が口にした。《甲子園に出ることでしか(恩を)返せないと思った》。捕手の東川(うのかわ)翔君(3年)は今夏、甲子園出場を果たし、どうしても報告したい先輩がいる。

 「よいしょっ」「よっしゃー」。昨夏の県独自大会で、決め球を投げ込むたびにマウンドで雄たけびを上げた当時3年のエース坂井渚さん。気迫のこもった球を受け続けたのが東川君だった。高校から捕手に転身した東川君にとって、坂井さんは特別な存在だった。

 バッテリーを組んだのは2019年の夏。新チームの始動直後だった。はじめは坂井さんから怒られてばかり。キレの良い変化球にキャッチングがずれ、縦に変化する球は止められずに何度も後ろにそらした。「気合が見えない」とも言われた。冬になると「俺がワンバンしちゃる」とグラウンドに誘われ、2人でワンバウンド捕球の練習を繰り返した。

 練習の成果が見え始めた昨年春、全国高校野球選手権大会の中止が決まった。坂井さんは寮の風呂場で泣いていた。独自大会の開催が決まっても、当時の3年生からは「もう出なくていい」という声すら上がっていた。

 甲子園出場をめざし、地元を離れて寮生活を送る選手が大半の桜ケ丘。東川君もその一人だからこそ、「もし自分が3年だったら、悔しい気持ちで逃げ出したくなると思った」。大会出場への決断は3年生に委ねられた。食堂に集まり、ミーティングする先輩の姿を何度も見た。

 話し合いの末、「山口のてっぺんをとって終わる」という目標の下、チームは再び一つになった。何より坂井さんともう一度バッテリーを組んで試合に臨めることがうれしかった。

 迎えた独自大会の決勝戦九回表1死一、三塁。マウンド上の坂井さんに駆け寄った。「全部思いっきり投げるから、応えてくれ」。信じ、頼ってくれたと感じて燃えた。2死二、三塁とした後、縦に落ちる変化球で打者から空振り三振を奪ったが、球は本塁ベースに当たって暴投、振り逃げ。決定的な追加点となった。

 試合後、最後のキャッチボールをしながら坂井さんは泣いていた。東川君も悔しくて、申し訳ないと思ったけれど、涙はこらえた。次の夏は「坂井さんのおかげで甲子園に出られました」と、報告すると決めた。

 いまもピンチの場面ではあの雄たけびを思い出す。「坂井さんだったらどこに投げるかな」。自分の中に、いつも強気な先輩がいる。=おわり(寺島笑花)

関連記事

アクセスランキング

注目の動画

一覧へ