野球部が生徒会役員にずらり 両立支えた山村留学生たち
(13日 高校野球岩手大会 葛巻5-7一関工)
3連打で2点を返し、差はあと3点。九回表2死二塁の崖っぷちで、葛巻の4番、服部河来(がく)主将(3年)に打順が回ってきた。
打法は、投打の「二刀流」で米大リーグを席巻する大谷翔平選手をまねた「ノーステップ打法」。左足を踏み出さず、振り抜いた打球はレフトに転がり、差は2点に縮まった。
この9年間届いていない夏の1勝に、あと一歩まで迫った。
生徒が少なく、山村留学生を受け入れている葛巻。服部主将が野球部に入ったとき、同学年の部員4人のうち、2人はその制度で花巻市から来た伊藤友聖(ともせ)君と関知諒(ともあき)君だった。さらに秋には、久慈市出身の大上北都(ほくと)君が加わった。
葛巻の人はおとなしく、花巻の人はよく笑う。個性はそれぞれだが、みんなバナナが好物で、練習の合間によく食べた。何より野球が大好きだった。
野球部のメンバーは生徒会でも一緒だった。
昨秋、候補者がおらず、服部君が生徒会長を引き受けると、執行部の役員に伊藤君と大上君、大川原陽斗(はると)君の同学年の3人が名前を連ねてくれた。
生徒会の仕事は忙しく、体育祭や文化祭の準備で野球部の練習開始に間に合わない日も多かった。
その間、関君が後輩をまとめ、途中で合流した4人は、照明のないグラウンドで球が見えなくなるまで練習を続けた。
この日は、五回裏までに7点差をつけられ、コールド負けも見えていた。だが、六回表に服部主将の適時打で2点かえすと、流れが葛巻に傾いた。
九回表、服部主将は失策と暴投で三塁へ。大上君が四球を選んで、一打同点の好機になったが、大川原君が三振に倒れた。
涙を流すメンバーもいた。だが、野球と生徒会の「二刀流」をやりきった服部主将に涙はなかった。「3年間、楽しかったの一言しかない」。そう言って、笑顔で集合写真に納まった。(西晃奈)