7月11、12日の高校野球 岩手
2021年7月13日04時00分 朝日新聞デジタル
第103回全国高校野球選手権岩手大会は4日目の11日と5日目の12日、県営と花巻で1回戦計8試合があった。春季県大会4強の花巻南が、盛岡北を11―0の5回コールドで破り、一関一が3時間超の熱戦の末、福岡工を振り切った。降雨のため12日の森山の2試合が順延になり、13日に同球場で行われる。県営と花巻で13日に予定されていた試合が14日にずれ、2回戦は15日からになる。準決勝は21日、決勝は23日に開かれる。
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1点を追う九回表、2死一塁と追い込まれたところで、盛岡農の一塁コーチャー、滝本雅也君(3年)は叫んだ。
「絶対に打てる。いけるぞ!」
打席にいたのは、三回表に三塁打を放った坂本壮汰君(3年)だ。
しかしバットは空を切り、ゲームセット。三塁側のスタンドから聞こえる太鼓の音と歓声が、夏の終わりを告げた。
小中学校ではホッケー部。テレビで甲子園の中継を見て、高校では野球部に入ろうと考えた。
だが、経験者ばかりで入る勇気が出ず、一度はスケート部へ。それでも思いを断ち切れず、同じクラスで仲良くなった熊谷拓斗主将(3年)に秋ごろ、思い切って相談した。
「いいじゃん」。即答だった。初心者のうえ途中入部であることの不安を伝えると、「みんな優しいし、一から教えるよ」
スパイクやグラブといった道具をそろえるのに、お金がかかることも悩みだった。すると同級生や先輩が「おれらが道具貸すよ」と背中を押してくれた。
打撃や守備で教わったことを忘れないように、2年の夏からは、A6判のノートとシャープペンを尻ポケットに入れ、メモした。
「打席で構える時は重心を右に」「体重を移動させて腰を回す」
左ページに書き留めたことを、その日のうちに右ページに清書。練習後や休みの日に復習して、仲間に見てもらった。そのかいあって、練習試合でヒットを打ったこともあった。
「同級生9人で夏の大会に出る」。一番最初にノートに書いた目標だが、この日は一度も出場できず、果たせなかった。
「声で仲間を励ませてよかった」と思う半面、本心ではグラウンドに立ちたかった。だから専門学校に進学したら野球はやめない。もっとうまくなるため、ノートを書き続けていくつもりだ。(西晃奈)