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豪雨で校舎や道具が水没 「感謝の夏」掲げる熊本・芦北

2021年7月10日17時12分 朝日新聞デジタル

 部室の角に額が置かれていた。太字で記された「感謝の夏」。小さな寄せ書きが幾つも見える。「最後まで笑顔」「声出してがんばるぞ」。出入りする部員は文字を見て、小さく「よし」と気合を入れ、グラウンドへ走り出す。「これまでの支援があったからいまの自分たちがいる」

 芦北高校(熊本県芦北町)は昨年7月の記録的豪雨で被災。今夏の大会に臨むスローガンを考えた時、野球部のみんなが思い浮かべたのが「感謝」だった。

 豪雨に見舞われた翌日、学校に向かった当時2年の浜田朝陽(17)は言葉を失った。校舎の1階が水没し、グラウンドは全面に泥が積もっていた。ピッチングマシンなどを収納していた小屋がひっくり返り、部室にあったスパイクはグラウンドを挟んで向かいにある倉庫の屋根の上に転がっていた。片付けに追われる一方、被災した周辺の民家でも土砂をかき出した。

 野球用具がほとんど水没し、残ったバットでバドミントンのシャトルを打つ練習から始めた。窮状が伝わり、被災から1週間ほどして支援の輪が広がった。県内各校からボールやヘルメットなどが届いた。水俣高校からはOB会の呼びかけで新しいピッチングマシンが寄付された。中日ドラゴンズなどプロの球団からもバットやグラブなどが寄せられた。用具は被災前よりも増えた。「まだ野球を続けられる」。浜田は希望が見えた気がした。

 当時の主将は生徒会長だった。2年からエースを背負い、試合でチームを盛り上げてきたことを見込まれ、その主将から「お前ならみんなを引っ張れる」と次期会長の立候補を勧められた。「豪雨で支援してくれた方々に応える方法はないか」と自問していた浜田は、昨夏の県独自大会後に生徒会長になった。

 全校生徒に呼びかけ、野球部が率先する形で地元漁港に漂着した流木の撤去を手伝った。文化祭では町の復興を応援する動画制作を企画し、クラスごとに各地で撮影した。「芦北高校は町内唯一の高校。自分たちにできることをして町を元気づけたい」

 グラウンドは今年3月に復旧。部員と監督の前島和也(41)は5月、夏に向けたスローガンを話し合った。部の恒例だ。浜本葵主将(17)を始めとする3年生たちは、昨年からすでに思いが一致していた。前島が「『感謝の夏』でいいな」と聞くと、「はい」の返事がグラウンドに響いた。

 マネジャーを中心に額をつくった。部室の扉にも同じ言葉を貼った。「必ず目に付く。感謝の気持ちを思いだし、気持ちを引き締めてくれる」と浜田。大会でベンチに飾るため、部員全員で折り鶴で「感謝」の文字もつくった。

 芦北は開幕当日、リブワーク藤崎台球場での第1試合で初戦を迎える。浜田は「これまでたくさんの方々から支援をもらったので、それに応えられるように一生懸命プレーし、相手のチームにも感動を与えられるような試合をしたい」。(敬称略)(屋代良樹)

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