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守りの松山商? そんなの気にしなくていい 井上明さん

2021年7月9日09時00分

 第103回全国高校野球選手権愛媛大会が10日、開幕します。これまで愛媛代表は、夏の甲子園を何度も制してきました。松山商の元エース井上明さん(70)も、頂点を極めた一人。自らを育てた愛媛野球のいまを、レジェンドはどう見ているのでしょうか。

 ――愛媛の野球といえば伝統の「松商野球」。井上さんにとって松商野球とは、どんな野球なのでしょうか。

 僕らの中学の頃から、よく言われていたのは「守りの野球」。これは伝統としてずっとあった。

 僕らが商業に入ってからも、それは想像通り。一色俊作監督も「守りの野球」を掲げ、常に「理想は1―0の試合」と言われましたね。要は1点をどうにかして取る。で、1点も与えない。守備の強さで負けない。そういう野球を掲げているところなんですよね。

 ――一色監督からは、どんな指導を受けましたか。

 練習は8割以上がノック。守りなんですよ。打撃練習は、レギュラーでも5本打てればいい方。

 投手の守備練習もかなり徹底する。バントの転がる位置やリードの取り方。想定を変えながら、20分から30分ぐらい練習をくり返す。しんどいですよ。

 でも、そうやってシミュレーションをくり返すと、「これなら二塁に間に合うな」とか、「一塁線に転がったら、この経路で走れば一番近い」とか。全部分かるようになる。

 だから、バントがまったく怖くなかった。すると、守備がうまいから、相手もバントをしてこなくなっちゃうんですね。

 ――守備で相手に圧をかけるんですね。

 そうそう。試合開始前の7分間フィールディング(守備練習)ってあるでしょう。一色さんは必ず重視してましたね。相手に「これは負ける」と思わせるぐらい、プレッシャーをかける。

 三塁手の谷岡潔は肩の強さが天下一品。谷岡に深く守らせて、一塁に送球する。これがすごい球で、「うわー」と球場がわく。二塁手の福永純一には、塁の後ろぐらいにライナーを打って、それに飛び込ませる。で、パッと一塁に返すんです。これが仕上げ。それぐらい計算し尽くしていて、細かかったですね。

 ――「鬼」という評判もある一色監督ですが。

 非常に理詰めの野球をする。ヒットエンドランも徹底するし、現代的な野球をしていたと思う。大学に入っても、朝日の記者になって野球を担当しても、高校時代に習った野球が古くないと感じた。

 たとえば、試合で走者を背負うと、サインは投手の僕が出してたんですよ。二塁走者にサイン盗みをされないようにね。50年前にそんなことやるチームはないでしょう。体の手入れについても、丁寧に細かく教えてくれた。そういう繊細な指導者でした。

 ――卒業後の松山商を、どう見ていますか。

 僕らの後、優勝したチームもあったから、きめの細かさとか、いい面は継続してもいいと思う。でも、変わらない「守りの野球」は現代野球にそぐわなくなったと思う。コツコツ守るばかりでは、いまの強豪には相手にならないよ。

 ――いまの大野康哉監督は「選手たちは重たいものを背負わされている気がする」と話していました。

 絶対そうですよね。期待ばかりかけられて、大変だと思う。だから「松商野球」なんてバックボーンは気にしなくていいって言いたい。伝統はこれから自分たちで作ったらいい。

 型にはまらず、小さくならず、意表も突いてみる。いま自分たちが描いている野球をのびのびとやってほしい。いまや伝統なんて、くそ食らえでしょう。新しい松山商を、思い切って、どんどん作ってほしい。

 ――松山商に代表される愛媛野球。甲子園の優勝から遠ざかっていますね。

 かつて、宇和島東を率いた上甲正典さんが変化を起こした。「打倒松商」を掲げていた。商業と同じ「守りの野球」をしたんじゃ勝てないというので、「パワーで粉砕する野球」を実現して、それを謳歌(おうか)したわけですよね。それが済美の活躍にもつながった。

 時代に即した野球が必要なんです。我々の時代みたいな「1―0で勝つ」なんてのは、もうあり得ない。5点でもセーフティーじゃないんだから。6、7点一気に取る時代だもんね。

 高松商(香川)なんかは変わってきましたね。粘りのイメージから、パワーも出てきた。愛媛の野球はいま一つ変われずに遅れている気がする。そこが少し物足りないところだと思う。

 ――愛媛は後れを取っている、ということですか。

 愛媛で勝てる野球をしても、その強さには限度がある。全国で2回勝てたとしても、その先に進めない。

 そういう積み重ねがあって、愛媛のチームはもう怖がられないもんね。「力対力」の戦いでねじ伏せられている。それに対抗できるだけのものが、まだない。

 たしかに愛媛野球は全国を席巻しました。でも50年も経てば野球は変わります。昔の「うまい野球」は通用しなくなるわけです。(聞き手・照井琢見)

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