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「勝利の参考書」 野球経験者のマネジャーがつくる

2021年7月9日09時00分 朝日新聞デジタル

 B5判のルーズリーフが手元に置かれていた。横手心海(こうみ)(17)は練習試合を見つめながら、気付いたことを書きとめる。試合の合間に、部員が代わる代わるやってきてのぞき込む。

 必由館高校(熊本市)野球部マネジャーの3年生、横手が2年前からつけている「練習ノート」。部員にとって、勝利のヒントが満載された“参考書”だ。幼い頃から甲子園のベンチ入りを夢見て歩んだ、横手の思いも詰まっている。

 園児の頃からグラウンドで球音を聞いていた。父親は熊本県立高校の野球部監督。夏に自宅のテレビが映すのは選手権大会の試合だった。熱気に包まれたグラウンドを駆ける球児の姿を見て、大舞台に憧れた。

 小学生になり、父親の高校でマネジャーの手伝いもした。お姉さんたちにかわいがられ、打撃練習用のボールにビニールテープを巻く作業に夢中になった。高校野球のマネジャーになることが念願となった。

 小4で学校の野球部に入り、プレーも重ねた。「マネジャーをやるからには野球を知らないとと思った」。中学でも部活を続け、二塁手としてレギュラーを勝ち取った。熱中したが、同時に壁も感じた。同じ練習メニューでも男子部員のように打球の飛距離が伸びない。相談した監督の言葉は「自分にできることを伸ばせ」。速いゴロを心がけた打撃練習に徹し、3年生の時、県中体連の大会で安打を放った。

 高校でマネジャーになってからは、トス打撃のボール投げやピッチングマシンの扱いも任された。スムーズに次の練習メニューに入れるよう意識して準備する。野球経験を生かし、選手の気持ちに立った環境づくりを心がけた。

 やりがいを感じながらも、「自分だからできること」を探し続けた。スタンドから試合を見守った1年の夏の大会。秀岳館に敗れた3回戦の試合後、当時の監督に呼ばれ、日々の練習を振り返るノート作りを提案された。「お前の経験をいかせるんじゃないか」。これだと思った。

 翌日の練習からノートを手放さなかった。プレーや部員の動きで気付いたことを自己流で書いた。監督のつぶやきも聞き漏らさずに記す。練習後は読みやすく清書し、LINE(ライン)にあげてチーム内で共有した。「課題の克服に役立ててもらい、少しでも甲子園に近づきたい」

 一塁手の中山大輔(17)は、無意識の目線の動きで相手にサインプレーをさとられるとアドバイスされた。「経験者だから周りがよく見えていて、もう1人の選手が外から見てくれている感じ」と中山。大事なことを話し合うミーティングに真剣さがなく、横手が「こんな雰囲気でするのはおかしい」と活を入れたこともあった。主将の片岡尚哉(18)は「よい意味で厳しさがあって自分の意見をまっすぐ伝えてくれるから、雰囲気が引き締まる」と話す。「当たり前のことができて、強いチームになってほしい」と横手。部員の保護者らも厚い信頼を寄せる。

 「ありがとう」。練習中にさりげなく言われるのが、横手はうれしい。マネジャーになったのは甲子園をめざしたから。今はそれ以上に、「みんなと一日でも長く一緒に野球をして、笑顔で有終の美を飾りたい」と思う。

 練習ノートは2冊で400ページを超えた。この夏、マネジャーとしてベンチ入りする。

(敬称略)

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