スポブルアプリをダウンロードしよう

  • Sportsbull Android App
  • Sportsbull iOs App

すべて無料のスポーツニュース&動画アプリの決定版!

QRコードを読み込んでダウンロード

Sportsbull QRCode

女子主将、ベンチ外から後押し 夏の大会は球場補助員

2021年7月12日16時15分

 「練習だりー」。そんな男子部員の声をさえぎるように敬和学園(新潟)の女子部員、稲垣凜音(りんね)主将(3年)のよく通る声がグラウンドに響いた。「今日も練習はじめます」

 小学5年から野球を始め、中学では三条市内の女子野球チームに所属。自分よりも上手な選手は多かったが、野球への思いや声出しは誰にも負けなかった。だが、日本高野連の規定で女子部員は公式戦に出られない。高校でも野球を続けるかは決めていなかった。

 入部のきっかけは、母だった。入学試験でたまたま2人を案内した野球部員に尋ねた。「うちの子も野球をやっているのですが、入れますか?」。合格発表でその部員は2人を見つけ「先生に聞いたら、野球部OKだそうです」と知らせてくれた。母は高校で目標を持って欲しかったという。

 だが、稲垣は不安だった。小学生の時、試合中に相手ベンチから女子が野球をしていることを揶揄(やゆ)されたことがあった。一方で「女子なのにすごいね」と言われることも。性別のせいで拒絶されたり、気を使われたりしないか。

 体験入部に足を運ぶと、特別扱いされることはなく、1人の部員としてみてくれた。入部後も性別や先輩・後輩の垣根はなかった。男子と同じ練習が課され、手加減はなかった。同学年の部員とは本気で口論することもあったが、逆にそれもうれしかった。

  ■   ■

 昨夏の独自大会後のミーティング。「稲垣に主将を任せたいんだけど、どうだろうか」。長谷川朗(あきら)監督が部員に呼びかけた。誰よりも真剣に練習に取り組み、不平・不満も口に出さない。積極的で明るい稲垣なら、部員をまとめられる。誰も異論はなかった。

 「純粋にうれしかった」という稲垣。部員はマネジャーを含め10人。楽しい部活にしようと、言いたいことを言い合える雰囲気作りを目指した。生徒会副会長でもあり、練習に参加できない日もある。そんな時や公式戦では林孝行(たかゆき、3年)が部を率いる。林は「主将として違和感はまったくない」と稲垣を信頼する。村井大輔(2年)も「凜音さんが声をかけないと、部活がはじまらない」。

  ■   ■

 6月20日、稲垣にとって高校生として最後となる練習試合があった。終盤の4打席目、ファウルで4度粘った後、最後は高めのボール球を空振り三振。この日は無安打に終わった。積極的にバットを振った結果だった。高校野球での安打は1本のみだが、「やりきった。楽しかった」。

 これまでの試合では四死球狙いで打席に入っていた。男子が投げる球を打ち返すのは難しく、出塁してチームに貢献しようとの思いが強かった。「男女の壁を誰よりも感じていたのは自分だったのでは。もっとがむしゃらにバットを振っていれば」との思いも残る。

 今後、野球を続けるかは決めていないが、将来は野球に関わる仕事をするつもりだ。イベントプランナーとして、学校の枠を越え女子野球部員が交流できる企画をしたい。交流の機会が増えれば、性別にとらわれず、のびのびと野球ができるはず。高校野球を通じて、そんな夢が明確になっていった。

 「最低で最高のチームメート」と稲垣は仲間を評す。練習中の文句や悪口が多く、片付けも遅い。だが、女子部員の自分をありのまま受け入れ、主将として支えてくれた。

 チームはここ数年、公式戦で初戦敗退が続く。声には自信があるが、今大会は感染対策のためスタンドから声援を送ることはできない。なるべくチームの近くにいようと、試合では球場補助員を務める。応援はできないが、仲間の活躍を願い「心の中で叫んでいます」。

=敬称略(小川聡仁)

関連記事

アクセスランキング

注目の動画

一覧へ