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「甲子園にとりつかれていた」監督の心境、コロナで変化

2021年7月10日09時15分 朝日新聞デジタル

 第103回全国高校野球選手権大会の地方大会が本格化する。2年ぶりに大会は復活したが、球児や指導者たちは今年も新型コロナウイルスの影響を受け、制約のなかでこの夏を迎えた。時に悩みながら、逆境に立ち向かうその姿を追った。

■最終イニング、両手組み祈る主将

 昨夏の茨城県の独自大会最終日、明秀日立の金沢成奉(せいほう)監督(54)は選手たちの姿に心を打たれた。

 雨天順延が重なり準々決勝の多賀戦で打ち切りが決まっていた。その最後のイニング。4番には守備から途中出場していた西田楓月(かづき)が入っていた。

 「本来ならメンバー外の3年生だけど、仲間に愛されていた。打席に立たせたかった」

 「次に回せ!」。ベンチの選手たちも同じ思いだった。

 1点を奪った後、2死から1番打者が出塁した。あと2人がつなげば西田に回る。ふと隣を見ると、主将の木下大我が両手を組み、祈るようにしていた。

 気づかされた。

 「あ、やっぱり野球はこうでないとダメだよな、本当の意味で組織ってこうだよな」と。

 1995年から2010年まで青森・光星学院(現八戸学院光星)の監督を務めた。坂本勇人(巨人)らを擁して春夏計8回、甲子園に出場し、4強が1度、8強が2度。同校を東北有数の強豪に育て上げた。

 「熱狂的な甲子園のファンの前で勝って、その余韻に浸ってまた次の試合ができる。あの1カ月の高揚感は、お酒に酔うどころの話ではなかった」

 12年秋、明秀日立の監督に就いてからも、チームワークや一体感よりも、勝つことを優先した。社会に出れば誰かを支える側に回ることはある。そんな考えもあり、大会前になればメンバー外の選手は、グラウンド整備などのサポート役に専念させた。

 18年の選抜で、同校を春夏通じて初の甲子園に導いた。

 「甲子園にとりつかれていた」

 その呪縛を解き放ってくれたのは、1年前の経験だった。

 昨年5月20日、新型コロナウイルスの感染拡大により、第102回全国高校野球選手権大会の中止が決まった。選手たちが深く失望しているのは分かった。一人一人と面談してみたが、どんな言葉をかけていいのか分からなかった。

 「まず私自身がもう一度、野球に真剣に取り組み、目の前の選手たちと一緒に野球をしようと思った」

 誰よりも早くグラウンドに出た。整備をして、水をまいた。自分なりに、選手たちに寄り添ったつもりだった。少しずつ、また野球に一生懸命になってくれた。

 夏の独自大会。茨城では出場選手を限定せず、全部員が出場可、試合ごとの入れ替えも可というルールが設けられた。

 当時の3年生は31人。目標を奪われた彼らに高校野球の2年半をやりきったと思わせてあげたいと、代わる代わる起用した。

 本来ならメンバー外だった選手が安打を打てば、本人以上に周りが喜んだ。

 結局、かなわなかったが、仲間を最後の打席に立たせたいと祈るように念じていた主将の姿は、そんな3年生たちの結束の象徴だった。

 「自己嫌悪のような。今まで自分は何をしていたのだろうという思いになったのです」

 振り返ってみれば、メンバーとメンバー外の選手の間に溝を感じることがよくあった。勝つことを優先してきた自分に責任があったのだと感じている。

 今年は茨城大会が近づいても、38人の3年生全員を練習に参加させてきた。時間はかかっても、一体感を大事にしたかった。

 ベンチ入りメンバー20人は例年と同じように戦力重視で選んだが、そこに込めた思いは違う。

 「みんなでやりきる、この楽しさを感じながら甲子園に出られたら、これまでとひと味もふた味も違うチームとして戦えると思う」

 13日、初戦を迎える。

■厳しさと、寄り添いと

 県岐阜商の鍛治舎巧監督(70)は新型コロナに振り回される部員の姿を目の当たりにして、厳しくあるだけでなく、寄り添うような存在でありたいと考えるようになった。

 昨夏、校内でクラスター(感染者集団)が発生し、岐阜の独自大会は辞退を余儀なくされた。

 8月の甲子園交流試合に出場は決まっていたものの、また好きな野球をする機会を奪われた選手たちを見て、いたたまれない気持ちになった。

 やはり新型コロナの影響で愛知の独自大会を4回戦から辞退した東邦に持ちかけ、8月末に3年生だけの引退試合を開いた。

 いま、選手の健康状態を何より気にかける。LINE(ライン)上で選手一人ひとりの朝の体温や食事のメニューの報告を受け、必要に応じて声をかける。

 「あまり選手を怒鳴らなくなり、以前より笑うようになった。日本一を目指すなかで厳しさは必要だけど、精いっぱい楽しんでほしいと思う」

 まずは無事に岐阜大会を戦ってくれることを願っている。(坂名信行、山口裕起)

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