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部員ゼロから再出発、9人そろった 僕らが迎える初の夏

2021年7月13日15時59分 朝日新聞デジタル

 山あいのグラウンドに、かけ声とボールの打音が響く。「元気いいね!」「がんばってね!」。下校する生徒が、グラウンドの部員に向けてエールを送る。「こんな風に野球ができると思わなかった」。石川慧(17)は充実感を覚えていた。

 小国高校野球部(熊本)は、4年ぶりに単独チームで夏の大会に出場する。入学者数の減少に伴い部員も減り、2017年秋以降は他校と連合チームを組んできた。この春、マネジャー以外の部員が9人に達した。

 主将の石川らが入学した昨春、部員はゼロになっていた。コロナ禍による休校があり、部活動選びは6月になってから。中学で野球を始めた石川は誘い合い、経験者3人と初心者1人の計4人で入部した。

 最初の目標は「楽しく野球をする」。4人でキャッチボールをし、マシンを使ってひたすら打撃練習をした。できるメニューは限られても、自由だった。4人で再出発したばかりの部は昨夏の県独自大会に出場しなかった。

 秋。監督の星田泰輔(32)は他2校と合同で県大会に出ることを提案した。「上級生との練習を通して学び、成長してほしい」との思いがあった。4人も試合に出たかった。

 週1回、親の送迎で小国高校から約1時間の菊池農業のグラウンドに通った。それまで経験しなかったシートバッティングなど実戦に近い練習が始まった。他校の上級生は違った。ノックでは必死でゴロに食らいつく。かけ声に気迫がある。「競技としての野球」を意識させられた。

 合同チームで出場した秋の県大会は初戦で文徳と対戦。実力校との試合で流れるような連係プレーなどを目の当たりにし、高揚感を覚えた。1対20でコールド負けし、勝負の厳しさも実感した。

 「今日もきついだろうな」。練習前にそんな声が漏れるようになった。今年1月の放課後、教室にマネジャー2人を含む部員全6人が集まり、話し合った。

 「エラーして責められるのがこわい」。そんな意見が出て、同意する声があった。石川は「試合ができるなら、続けたい」と伝えた。普段一緒に練習していない投手の変化球を打つのが新鮮だった。試合で見たプレーの数々は練習のモチベーションにもつながっていた。試合がしたいのはみな同じ。結論は出ず、教室でストーブの作動音だけが聞こえた。

 話し合いを重ねたある日。石川は「自分たちで楽しく野球をやりたいなら、自分たちで試合に出よう」と提案した。「それまで頑張ってみよう」。意見が一致し、単独での公式戦出場が新たな目標となった。

 2月ごろから、手分けをして部員集めに走った。大分県日田市から通学する石川は、母校の中学校で「1年生でもすぐスタメンになれるよ」「やりたい野球をやろう」と後輩に声をかけた。「楽しく野球をやっていたら入ってきてくれる」と信じ、部単独の練習に後輩を招いた。合同練習を通じて、練習で自然と声が出るようになっていた。

 努力が実を結び、この春に1年生5人が入部した。秋吉駿(15)は3月から部の練習に参加。「気迫があって、すごく楽しそうに見えたので入部しました」

 部員9人になり、走者をつけた守備練習などができるようになった。監督と石川を中心に作っていた練習メニューも全員で考えるようになった。「モチベーションがあがった。プレーに関する会話が増え、野球をする楽しさが変わった」と石川は感じている。

 4年ぶりの単独出場は校内のうわさになった。教員から「やっと単独で出られるね」と声がかかる。部外の生徒からは「おめでとう」と祝福される。練習を見にくる生徒も増えた。

 グラウンドの隣で野球部をみてきた陸上部3年の藤原倫(18)は「本番に近い練習ができるようになって、みんな前より生き生きしていて、かっこよく見える」と話す。

 今の部員にとっての初めての「夏」。石川は意気込む。「今まで応援してくれた方々への恩返しのためにも、公式戦でしっかりと戦う姿を見せて、小国町を元気づけたい」(敬称略)

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