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甲子園「現実的に難しい」 部内の温度差、主将の葛藤

2021年7月10日15時15分 朝日新聞デジタル

 「甲子園に出られるよう頑張ってください」

 6月中旬の朝、羽咋(石川)のグラウンドに、以前から交流のある地元の学童野球チームの小学生2人が、夏の大会の活躍を願って折った千羽鶴を届けに訪れた。主将の舛岡諒汰朗(3年)は笑顔で受け取った。

 うれしい気持ちに偽りはない。でも、その後の取材にこうも語った。「志はあります。でも、現実的に難しいと思う」

    ◇

 中学時代、強豪私立の金沢への入部も志望していたが、公立の道を選んだ。私立のように室内練習場などの設備はなく、練習時間も限られている。それでも強豪私立を倒す先輩たちの姿と、えんじ色のアクセントカラーが印象的なユニホームに憧れた。

 だが、現実は甘くない。1年目の夏、正捕手として試合に出場したが、2回戦でその金沢に2―14と大敗した。新チームで迎えた昨秋は遊学館に、今春は星稜にコールド負け。入学してから公式大会で敗れた相手は、ほとんどが私立だ。「もっと勝てるチームに進学した方が良かったかもしれない」。そう思ったこともある。

 「めざせ!甲子園!」

 野球道具を保管する倉庫入り口の壁にはそんな文字が飾られている。この言葉通り「高い志を持って」野球を続けてきたが、周りとの温度差を感じることも。

 冬の厳しい走り込みの前には仲間から「えー」の声が上がる。早朝練習に参加するのは決まった数人で、1人の日もある。でも、過剰に部員と衝突したり、何かを強制したりするのはよくないと考えている。「試合で1本打ってチームで勝てる喜び」を想像し、毎朝7時半からグラウンド脇で黙々とバットを振る。

 帰宅は決まって夜8時。食事の際に飲むのは「冷えた麦茶や水が一番」で、ジュースやスナック菓子は口にしない。食べ終え、洗い物を終えると、午後10時半まで勉強し、風呂に入ると眠気に襲われて就寝する。そんな毎日を積み重ねてきた。

 野球を続けられるのは、父・勇(47)の存在が大きい。毎朝、志賀町の自宅から約12キロ離れた学校へ車で送ってくれる。自宅庭のゴルフ用ネットを改造して打撃練習のスペースを設けてくれたのも父だ。日本料理店を営む傍ら、野球部の保護者会長を務め、試合には必ず顔を出す。「努力が報われるかは分からないけど、努力は無限にできると思うので」。父はそう言って、応援を惜しまない。

    ◇

 県内では、強豪私立とその他の学校の力の差は大きい。夏の県大会に限れば、公立のチームが優勝したのは2000年の小松工が最後だ。私立のように一心不乱に甲子園へ邁進(まいしん)するには厳しい状況がある。

 ただ、そのことが悪い、とは監督の宮嵜宏正(60)は考えない。

 甲子園を目指す人、勉強に軸足を置きながらも野球を続けたい人、公式戦には出られなくても練習に励む女子部員……。野球への関わり方は人それぞれでいい。「声を出す選手もいれば、黙ってプレーする選手もいる。その集合体が、羽咋高校野球部。画一的である必要はない」

    ◇

 初戦まで約2週間となった6月26日、マネジャー5人はチーム全員に手作りのお守りを手渡した。

 ボールを模した白地の中に「必笑」の文字。勝って笑ってほしい、という思いがこめられている。

 「任せとけ」

 舛岡は少し照れくさそうに言った。(敬称略)

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