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「初期投資ゼロ」で新入部員募集 20年ぶりの夏1勝へ

2021年7月10日16時15分

 「今回は出場を辞退することになりました。力及ばずで申し訳ありません」。春の新潟県大会初戦前日の4月30日午後6時、新潟北の山田尚勲(まさひろ)主将(3年)に相馬謙司監督(38)からLINEメッセージが届いた。

 同校は生徒の新型コロナ感染がわかり、24日から休校になっていた。相馬監督はここ数日、県高野連や学校側との調整に奔走していた。休校が解ければ出場の可能性もあったが、休校が続くことが決まった。

 山田はまず感謝を伝えたいと思い、4分後「わかりました。ありがとうございます」と返信した。冬場の練習の成果を発揮し、夏の大会に弾みをつけるはずだった。そう思うと悔しさがこみ上げてきた。

  ■   ■

 新潟北は、夏の選手権新潟大会では2001年以来勝利がない。山田ら3年生が入学してからは公式戦の勝利は一度もない。

 相馬監督が部長を経て監督に就任した18年4月の部員は4人。慢性的な部員不足に悩まされ「途方に暮れるしかなかった」。経済的な理由など家庭の事情で野球を続けられない生徒を何人も目の当たりにした。置かれた環境のせいで野球をできなくなるのは不平等だと感じた。

 入学前の制服採寸会や集会で「初期投資ゼロ」をうたった自作のチラシを配り、生徒が野球を続けられる環境整備に取り組んだ。グラブやユニホームなど用具一式を新品でそろえると10万円以上かかる。そこで、OBらに募り、グラブやバットなどを寄付してもらい、部員に無償で貸し出した。試合や練習時の保護者の負担も減らそうと、テント設営や「お茶当番」を廃止し、監督自らマイクロバスを運転し選手を送迎した。皆川磨央(まお)(3年)は野球未経験から入部した。「初心者でも始めやすい環境が整っていた。日々成長を実感でき、野球部に入って良かった」と話す。

 スポーツや文化の分野で秀でた生徒を対象にした「特色化選抜」を活用。地元の中学約30校の野球部顧問に制度を説明した。今春は1年生13人が加入し、マネジャーも含め部員は20人以上になり、紅白戦もできるようになった。

 捕手の山田は、課題だった肩の弱さを筋力トレーニングと投球フォーム改造で克服。春先の練習試合では初めて二盗を阻止した。レギュラー争いが生まれ、チームも日々進歩していた。

 20年ぶりの夏1勝に向け、春の県大会は貴重な実戦。主力の一端を担う1年生にも公式戦の雰囲気を感じてもらう狙いもあった。「本音を言うと出たかった」。そんな思いを押し込め、部員を鼓舞するメッセージを送った。「大会がなくなったのは悲しいけど、その分、みんなで練習して夏の大会で絶対勝てるように頑張ろう」。「やったるわ」「夏かぁぁぁぁ!」「がんばるわ」。返事が相次いだ。

  ■   ■

 本来は春の県大会初戦だった5月1日、休校が翌日に解除されることになった。出場辞退を知った県内の野球部の監督からは「大丈夫ですか」「今度練習試合やりましょう」などと励ましの電話が寄せられた。4、5日には練習試合も組まれた。

 6月の練習試合で、4番・小宮陽人(はると)(3年)は人生初本塁打を放った。9番・土橋(どばし)勇汰(2年)は力む癖がなくなり、毎試合安打が出るようになった。

 初戦は11日、新潟工と対戦する予定だ。チームのスローガンは「夏に勝つ」。山田は手応えを感じている。悔しい思いをしたからこそ、この1勝には意味がある。「試合に出られなかった分、絶対に勝つという気持ちはどのチームにも負けていない」

 =敬称略(小川聡仁)

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