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12人の野球部、兄弟2人だけに 休部前の1勝にかける

2021年7月12日14時00分

 「野球を続けるか、2人で1日考えて決めるように」。海洋(新潟)の三つ子の次男・宮腰創(そう)(3年)と三男・育(いく)(同)は昨年7月、高岡禎(ただし)監督から告げられた。

 この日、県高野連独自大会の2回戦に連合チームの一員として出場し敗れた。3年生の引退で、部員は2人だけになる。兄弟2人で1年後の夏の大会を目指せるか。その覚悟を問うた。

 球場から帰る車中、育は「このままでは終われない」と漏らした。創も「あと1年、やるしかなくね」と返した。

 2日後の朝、2人は職員室の高岡監督を訪れ「やります」と声をそろえた。2人だけの1年が始まった。

  ■   ■

 創と育が入部した2019年春、部員は12人いた。だが、3年生引退や退部者が続き、1年後には1年先輩の春山大河主将と創、育の3人にまで減った。それでも「春には新入部員が入るかも」と望みは捨てなかった。

 20年春、経験者2人が体験入部に訪れた。後輩ができるかもしれないと期待し、育は「部員が入ってくるかも」と母に笑顔で伝えた。「お前もしっかりやれよ」と創にも話した。

 しかし、部員は増えなかった。6月中旬、育は教室で弁当を食べていて友人に尋ねられた。「新入部員どうだった?」。気づいた時には涙がこぼれていた。その日、部活を休み、自室にこもった。

 夕方に練習を終えた春山主将と創が電話をくれた。春山主将は「来なかったけど、どうしたん?」と心配していた。「やる気が出なくて。野球をやめたい」と育がこぼすと「大会もあるしがんばろう」と励ました。創も「先輩が引退するまでは続けないか」と声をかけた。春山主将が毎朝早く登校し、グラウンド整備をする姿を見てきた。育は「この人に迷惑をかけたくない」と退部をとどまり、昨夏の独自大会に出場した。

  ■   ■

 独自大会が終わり、2人だけになってからの練習は質・量ともに大きく変わった。ノックも打撃も練習時間の半分は球が飛んでくる。練習量は1・5倍に。高岡監督は「県内でこんなに練習している選手はいないのでは」と認める。

 三つ子だが、2人は性格もプレースタイルも異なる。創はおおざっぱでマイペースだが、動きは機敏。俊足の遊撃手で、内野安打などで出塁し攻撃の起点となる。帰宅後、自宅横の空き地で、街灯の明かりを頼りに壁に球を投げ続け、捕球動作を体にしみ込ませた。

 一方、育はきちょうめんでコツコツと一つのことを続けることが得意。3番・中堅手として、連合チームの中軸を担う。練習後のストレッチを欠かさず、常にベストの状態で練習や試合に臨む。

 中学時代からともに野球を続けてきた兄弟だからこそ、お互いの長所も短所も遠慮なく言い合ってきた。別の高校で陸上部に入った三つ子の長男・拓も中学は野球部だった。「2人が野球に真剣に取り組んでいることはよく分かっている」と話す。

  ■   ■

 今大会は十日町総合と松代との連合チームで出場する。6月20日、連合チームで臨んだ練習試合。創は捕球が難しいショートバウンドの送球をうまくグラブに収め、二盗を狙った走者をタッチアウト。育は1死満塁の好機に右前安打を放ち得点を挙げた。

 今春、新入部員は入らず野球部は夏の大会後に休部する。それだけに2人はこの夏の1勝にこだわる。

 創は「キツいノックにも耐え、自主練習も毎日した。自分のプレーを勝ちにつなげる」、育は「休部はさみしいが、2人のプレーで海洋の存在を示したい。勝てばまだ野球ができる」。

=敬称略

     ◇

 第103回全国高校野球選手権新潟大会が7月10日に開幕する。困難や葛藤を抱えながら、それぞれの「1勝」をめざして、この夏を疾走する野球部員の姿を追った。(小川聡仁)

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