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打球でけが、でも「野球が好きだ」 野球部初の女子選手

2021年7月9日13時00分 朝日新聞デジタル

 「5セット目、用意」

 一関工高3年の石川愛癒(あゆ)さんがホイッスルを鳴らすと、約30人の部員が一斉に腕立て伏せを始めた。6月中旬まで、その列の中に自分もいた。

 だが、守備練習中に打球が当たり、鼻の骨が折れた。球を頭部に受けたのは3度目。正直に言えば、まだ球が怖い。それでもグラウンドに戻ってきた。

 「自分でやると決めた道。だから」

     ◎

 野球を始めたのは小学2年のとき。5歳上の兄が入っていた軟式野球チームに誘われた。

 中学では別の部活に入ろうと思っていたが、たまたまインターネットで侍ジャパン女子代表の存在を知る。動画を見て、ますます引き込まれた。

 本塁打を放ち、機敏な動きで守る――。こんなプレーができたら。親に言った。「私、日本代表になりたい」

 中学では男子と同じ軟式野球部に入り、3年でエースとして投げた。地元の女子野球チームでも活躍。「女子の甲子園」で優勝した県外の強豪校からも声がかかった。

 だが中学3年の冬、設備会社を営む両親から「跡を継ぐため、工業高校に行ってほしい」と言われた。

 1カ月間悩み、何度も話し合った。自宅に近い一関工高に進むことを決めた。

 「遠回りだけど、男子と練習すれば上達のスピードは早いぞ」。父の言葉も背中を押した。

     ◎

 野球部初の女子選手。しかも身長は153センチと小柄だ。体験入部すると、先輩から心配そうに聞かれた。

 「練習メニュー同じだけどできる?」「マネジャーの方がいいんじゃないの」

 気持ちでは負けていない。でも最初は、練習についていけなかった。

 ポールの間を全力で10往復している途中、息ができなくなった。遠ざかる仲間の背中を見ながら、涙があふれた。

 守備練習をしていたとき、イレギュラーした打球が口に当たった。前歯が2本曲がり、うち1本は神経がなくなっていた。

 1カ月後、練習に戻ったが、ゴロを見ると「また変な跳ね方をするのでは」と腰が引けた。エラーをしても先輩は何も言わない。

 げきを飛ばしたのは同級生だった。「腰高いぞ」「そんなのも捕れないのか」。守備の感覚を取り戻すのと同時に、対等に扱われたことに救われた。

 なぜ野球をやっているんだろう――。投球を再び頭に受け恐怖心がよみがえったり、厳しい練習で動けなくなったりするたび考えた。でも、ダイビングキャッチが決まると、そんな考えも吹き飛ぶ。結局、「私、野球が好きなんだ」と思う。

     ◎

 今夏の大会では、自分を除く同級生5人はすべてベンチに入る。「一緒にやってきたのに」。はじめから分かっていたものの、悔しかった。

 だが、自分には女子の連合チームで臨む「甲子園」が7月末にある。試合までにリハビリを終えられるかは微妙だ。でも、「男子と必死に練習し、自分の弱さと向き合ってきた。この経験はきっと力になる」。そう信じている。(西晃奈)

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