部員「たぶんイップスやわ」 主将の声かけに救われた
2021年7月5日15時45分 朝日新聞デジタル
(4日、高校野球兵庫大会 白陵4-11御影)
「普通にやっていれば大丈夫。どうにかなる」。
1点先行されて迎えた三回表、御影の主将、亀尾壮吾君(3年)は守備位置の左翼から大声で呼びかけた。いつも明るい中堅手の北田稜人(りょうと)君(3年)の表情が硬く、気になっていた。
「おう」と応じた北田君。気持ちがほぐれたのか、その裏、内野安打で2人の走者を進めた。「力になれたかな」。チームも逆転し、得点を重ねた。
仲間を気にかけ、声をかける主将でありたい――。その思いを強くした出来事があった。
昨冬、内野手の田辺朝日君(3年)は、送球ミスが続いていた。思ったところに投げられなくなる「イップス」かも。周りが口を出せば重圧になる。自分も中学時代、同じ経験をした。
それでも、2月の練習後、いつもより浮かない表情の田辺君が気になって、思い切って聞いた。「最近、どんな感じ?」。田辺君が重い口を開いた。「俺、たぶんイップスやわ」。誰にも相談できないまま苦しんでいた。
「直すのに十分な時間はある」。一緒に乗り越えようという意味を込めた。
帰り道、LINE(ライン)が来た。「任せとけ。イップスなんか一瞬で克服して夏には絶対活躍したるから」。力強い言葉がうれしかった。「気持ちを伝えれば、返してくれるんだ」
その後イップスを克服した田辺君は、この日はベンチだったが、かけ声でチームをリードしてくれた。自分も負けずに選手たちに「大丈夫」と声をかけ続けた。「夏が続く限り、みんなが笑顔で頑張れるように、僕が気を配って戦い抜きます」(西田有里)